春になってから、店頭では胃の症状と歯の症状が出ておられるお客様が非常に多いです。
なぜ、これほどまでに多いのかを考察いたしますと、今年の土運太過(どうんたいか)の運気が関係しているのではないか感じます。
2024年の土運太過の年は、消化器系、すい臓、胃などに負担が偏りやすい年になります。
春は肝の働きが高まり、土運であるすい臓や胃の働きが抑えられやすくなる季節になります。
この2つの相加作用で胃の不快感が出やすくなっているのではないかと思います。
また、ここ数週間、歯茎や歯の痛み、腫れを訴えるお客様も非常に多くなりました。
こちらも土運太過の運気によって「腎」が抑えられている影響が出ていると思われます。
腎が抑えられれば、腎が主っている骨や歯の働きも当然抑えられます。
また、歯茎は胃の状態がよく現れる場所(足の陽明胃経:ようめいいけい の経絡)です。
上記にも書きましたように春は胃の働きが抑えられやすい季節ですので、歯の根元である土台の歯茎の働きも抑えられ、歯の症状が出やすくなると考えられます。
冷たい物や甘い物、体調管理にも十分お気を付け下さい。
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2024年2月4日〜4月15日までが春になります。(4月16日〜5月4日までは春の土用になります)
春は冬眠していた動物は目を覚まし、山の雪は溶け出し、木々も芽を出し始めます。
春は生命が生まれ育ち、活動が始まる季節です。人も自然の流れに沿って、冬に溜め込んできたものが芽吹いて表に出てきやすい時期です。
「内臓の鏡」と言われる皮膚に、冬に溜め込んできた食生活のトラブルが皮膚のトラブル(かゆみ・乾燥・吹き出もの・湿疹)となって出やすくなります。
また冬は春に向けて静かに溜め込む時期ですので、冬に無理して体に負担をかけていた方は、春に疲れや眠気、イライラ、うつなど体調不良として症状が出てきやすくなります。
漢方では「春の時期は肝が旺(おう)する期節(正式には期の字を使います)」と言います。
今年2024年は土運太過(どうんたいか)の影響がありますので、胃や血に熱がこもるような余分な飲食物は控えるように致しましょう。例えば、チョコレートやお菓子全般、砂糖の多い食べ物(和菓子や洋菓子、ジュースなど)、もち系の食べ物、味の濃い物や刺激物(唐辛子など)を指します。
春に働きが高まり頑張っている「肝」ですが、その土台になっている関係性・場所が土運(すい臓や胃など)になります。
つまり2024年は土運太過の年で、土運にエネルギーが偏りやすくなっている影響は、肝にも伝わりやすくなるということが予測できます。以下の春に出やすい症状も例年以上に感じやすくなる恐れがありますので、体調管理には十分お気を付けください。
春は肝臓が頑張っている季節になります。肝臓や筋肉、目、自律神経、胃腸に無理のかかりやすい季節になります。
●転勤や入学、就職など環境が変わりやすく、ストレス(肝に影響)を受け、気持ちの乱れや不眠がでやすい時期
●筋肉(肝)の疲れ、だるさ、歯ぐきの痛み・こむら返り・ひきつり・眠気が出やすい時期
●目(肝)の弱りが出やすい時期(疲れ目、ものもらい、なみだ目、アレルギーなど)
●膀胱炎(膀胱の春風邪)が出やすい時期
●胃の症状やお腹の症状、便の状態が変化しやすい時
花が咲いたり芽が出たり生命が誕生する季節ですから、体温が上がり妊娠しやすい季節とも言われています。ぜひ体の原料や力を貯金していくことが大切です。
また土から芽が出るように、人間も体の中のものを芽吹こうとしていますので皮膚の守りが少ないときでもあり、風に当たりすぎると体調を崩しやすい時期です。ちょっと暖かくなってきたからと言って、薄着したり冷たいものを飲んだりしないように、春冷えに気をつけて下さい。2月の今日からするとまだまだ敦賀は雪が残り、気温も真冬並みなので薄着する方はいらっしゃらないと思いますが、これから暖かくなってきても…ということで注意しておいて下さい。そしてお酒を飲みすぎたり、偏食や睡眠不足、ストレスは特に肝臓を弱らせますので、気をつけて下さい。
健康や漢方薬のことでお悩みの方はお気軽にツルガ薬局までご相談下さいませ。
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さて今年も次年の運気を書かせて頂きたいと思います。
私たちの体は季節ごとに変化していることはご存知のことと思います。春は肝、夏は心、土用は脾(ひ:すい臓のこと)、秋は肺、冬は腎の働きが高まります。
これとは別に、その年の運気というものがあります。1年を通しての影響です。2023年は火運不及(かうんふきゅう)の年(2023年2月4日〜2024年2月3日まで)でした。2024年は土運太過(どうんたいか)の年(2024年2月4日〜2025年2月2日まで)になります。
土運太過の年は、土を表す「すい臓や胃を中心とした消化器系、肉付き(肌肉:きにく)、土台、口(唇)、乳、涎(よだれ)、化(万物を生化)、黄、土用、中央、甘味、湿、味、久座、噦(えつ:しゃっくり)、香(かんばしい)、歌、信、意(智)、思などの感情等」の働きが強まる、力が余る、過剰になりやすく、偏りができやすく、無理がかかりやすい年と言えます。
もう少し細かく解説して参ります。
土運太過の年は、信用や信頼、忠実性が強まり、道理や真理を見極め正しい判断をする力は弱まりやすい年であり、意思や思考・集中に関わる働きに偏りやすく、信念や記憶力に関わる働きは低下しやすい年でもあります。
自然界では土の気が強まる年ですから、土から育つ農作物や木々や植物の育ちが例年以上に激しく豊作のものも多い反面、過ぎることで反って不作や栄養不足に陥りやすくなる可能性もあります。土が強すぎることで水の潤いが不足しやすく、干ばつや土壌のアンバランス化を招き、その影響は動物や家畜、人間にも出てくると考えられます。地震や地盤の変化、岩石や山林、広く見れば海や川も全て土の上に流れていますから、ここのエネルギーが過剰になり動きやすく不安定になると考えられます。湿の影響も大きくなりやすい年です。また、バランス的に水運(すいうん)が抑えられやすく、金運(きんうん)も乱れやすくなりますので、海水温上昇(温暖化)、線状降水帯、津波や洪水、砂漠化、感染症や自然・経済・環境・世界情勢などの変化が激しくなることに対しても注意が必要です。
土運太過の年は、「化」の力が高まることで新しいものが生まれたり、今まであったものが劇的に変化する年になると言えます。また一方では基礎的・基盤的な部分や、基本の原則・原理に関係する分野は力強さが増すと考えられます。また「中央」の力が強まる年ですので、社会的・経済的・権力的な立場や場所や人に例年以上に偏りが出やすくなる年でもあります。
肉体的に見ていきますと、すい臓や胃、飲食物の入り口である口から始まり食道や十二指腸、小腸、大腸、出口である肛門までの消化器系全般、両腕両足、体の肉付き、乳などの働きが過剰になりやすくなります。力が高まることを考えれば、食欲が増したり、消化吸収機能が高まり、規則正しい食生活が出来ている人や栄養バランス等の管理が徹底され体を労わっている人にとっては、体調は良くなると思われます。しかし、暴飲暴食など不規則な生活などをされている方にとっては、口内炎や口角炎、口の中の症状や病気(涎やしゃっくり等も)、歯茎の症状、のどから食道、胃にかけての症状(食道がんや胃がん、胃潰瘍や胃の不快症状など)、十二指腸からすい臓、腸の症状(腸内環境の乱れや便秘、下痢等)や病気(潰瘍性大腸炎や憩室炎(けいしつえん)など)、乳がんなど、例年以上に症状が出やすくなる危険性があります。
土運太過の年は、胃に熱気がこもりやすいので、体に余分に熱をもちやすいような食べ物は食べ過ぎに注意しましょう。例えば、もち米類(おもちやあられ、せんべい等)、チョコレート類、味の濃い物(塩分が強い物、甘いお菓子類、わさびやトウガラシなどの刺激物など)の取り過ぎには注意して下さい。熱がこもり、気が痞(つか)えてくると、腫物(はれもの)や膿(うみ)も出やすくなります。吹き出物やおでき、ニキビ、歯肉炎や歯槽膿漏、歯茎の膿みや腫れ、ものもらいや目の症状、痔、前立腺炎などにもつながりやすくなります。血にも熱を持ちやすくなりなり、瘀血(おけつ:血液の古く濁ったもの)もできやすくなります。
前年の2023年は火運不及(かうんふきゅう)の年で、心臓や小腸、血液の働きが弱まっておりましたので、ここから助けられてしっかり働ける土運(胃やすい臓中心の消化器系)も本来の働きが発揮できず、胃と腸の不調は起こしやすいと考えられます。胃の体調、お腹の体調には十分に気を付けていきましょう!
またバランス的には腎系が抑えられるため、腎系の働きである「腎や膀胱、前立腺、子宮卵巣、骨や歯、関節、髪、耳、下半身、足腰、膝、骨髄、甲状腺、脳、精力、ホルモン系、生理・妊娠・更年期、成長、生命力などの力」は弱まりやすくなります。これらの箇所に病気をお持ちの方は、例年以上に体調管理にお気をつけ下さい。長い立ち仕事や下半身を冷やしたり、甘いお菓子などでさらに弱らせることのないようにしましょう。
精神的に見ていきますと土運太過の年は、色々なことに対して考え過ぎたり、思い込みが激しいと、体と心のバランスを保ちにくくなる年だと言えます。体力のない方は、悲しみや不安を抱きやすく、自律神経の乱れや神経過敏、焦りや落ち着かない気持ちになりやすく、泣きやすくなったり、あくびが出やすくなります。体内に熱エネルギーが多い方は、のぼせや充血、イライラや興奮の感情が出やすくなります。
またバランス的に恐怖や驚き、不安、呻(うな)りの感情が顕著になりやすく、血が弱い人は恐れやすく神経質になりやすいと思われます。腎が不安定となることで、腎の気が上に衝き上がりやすくなり(奔豚気病:ほんとんきびょうと表現されます)、下っ腹から喉や頭まで急な気の突き上げが起きたり、不安や心配、恐怖観念がもとになっている精神症状(うつやパニック、引きこもり、ノイローゼ、心配性など)や、動悸や脈や呼吸の乱れ、てんかん発作のような肉体的な症状も引き起こしやすくなると考えられます。不調を感じたら早めに整えられるように、ご不安な方はぜひご相談下さい。
人の体の経絡(けいらく:気血の通り路)への影響を見ていきますと、土運は足の太陰脾経(たいいんひけい)と、足の陽明胃経(ようめいいけい)の養いを受けております。あまり難しくならないように簡単に書かせて頂きます。太陰脾経は、足の親指の内側から上に上がり、下腹や生殖器、胃などの消化器系をめぐり、胸の外側を上り、心中にも影響しながら咽(のど)まで通っております。また陽明胃経は、目から下に鼻や口の周り、あごから耳、こめかみ、おでこまで上る通路と、のどから鎖骨近辺に下りて、胸の乳腺から胃、腹部、そけい部から足の前外側を下り、膝を通り、足の人差し指まで通っております。土運太過の年は、ここを中心に偏りが出来やすくなります。
生活上の注意点と致しましては、「久座(きゅうざ) 肌肉を傷(やぶ)り 脾(ひ)を労(ろう)す」 と言われます。
座る時間が長いことで肉が弱り、すい臓や胃などの土運が疲れて無理がかかってしまう、ということを現す言葉になります。お仕事上、生活上、座り時間がどうしても長くなってしまう人は、少しでも体を動かすことを意識していきましょう。また同時に長い立ち仕事などで骨に無理をかけ過ぎないようにも気を付けるようにしましょう。
「思の太過は脾を傷る」とも言われます。あまり深く考え思い込み過ぎないように、塞ぎ込みすぎないように、気分転換やプラス思考を心がけましょう。
甘味のものは脾胃に入ります。お菓子や菓子パン、ジュースなどの余分な甘味の影響は例年に比べて体調不良の大きな原因になることが考えられます。また胃が例年以上に頑張る年ですから、単純に胃に負担をかけることにも注意が必要です。暴飲暴食や噛む回数が少ない、塩辛いものや激辛のもの、味の濃い物が多くなり過ぎないようにも注意して下さい。
もう一つ、土運太過の年は湿の影響が大きくなります。例えば湿気の影響を受けやすい人というのは、鼻炎持ちの人、川や海などの水の影響を受けやすい人、新築の鉄筋コンクリートの建物に住み始めた人、夜のお仕事をされて日中は出歩かない人、スポーツなどで汗をかいた後に冷たい水分や果物、お酒などを取り過ぎてしまった人、汗をかいた後に風を当てて体が冷えてしまった人、長靴を履いて作業する人、雨風の中で仕事をする人、水回りの仕事をされている人、クーラーなどの冷気によく触れる環境にある人、体が濡れてしまう習慣がある人、神経痛や関節痛がある人、天気によって体調が崩れやすい人…などがいらっしゃいます。体を冷やさないこと、湿気が溜まらないようにする養生と一緒に、湿気取りの漢方薬もございますので、ご不安な方はお気軽にご相談下さい。
土運太過の年に最も体調を崩しやすくなると言われている季節は、土用になります。
土用は年に4回あります。(以下が2024年の土運太過の年の土用になります)
春の土用:2024年4月16日〜5月4日
夏の土用:2024年7月19日〜8月6日
秋の土用:2024年10月20日〜11月6日
冬の土用:2025年1月17日〜2月2日
季節の変わり目となる土用には、例年以上に体調管理にお気を付け下さい。
2024年もどうか皆様が、元気で幸せな方向へ進んでいけますように(/ω\)
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昨日の続きとして書かせて頂きます。
処方箋でも咳止めの薬が大変よく出ております。医療用の咳止め薬は注文しても全般的に品切れや出荷調整されており、入荷のめどが立たない状況です。昨日もTVでニュースにもそのことが取り上げられておりましたが、全国どこでも大変な状況なのだと思います。これから冬に向かいインフルエンザや風邪の更なる流行が予測される中で、やはり治すのはその人自身ですので1人1人が養生をしていくことが何よりも大切なことだと思います。処方箋でも1ヶ月以上咳が長引き、吸入薬やアレルギー薬、ステロイド薬等が追加されている人が増えているように感じます。
その中で、もう一つ症例をご紹介させて頂きます。
『30代男性 咳が1ヶ月以上長引いている 夜横になると咳が激しくなる 日中も咳が出て仕事に差し支える(接客業) 病院へ受診して検査しても特段異常なく 咳止め薬と痰切り薬が処方されるだけ これらの病院薬を服用してもほとんど咳変わらない 体がしんどい 自分では体を冷やさないようにしたり、早く寝たり、間食も取らず、食事にも気を付けているのに全く治ってこない 今までこんな経験はない 毎日寝て起きる朝方にだけ首から上を中心に汗が出て枕が濡れるほど(この後着替える)』
この方も以前から何度か漢方薬をお出ししたことがある方で、少し体質的に腎臓が弱い方です。きっかけは睡眠不足が元で熱が出てきて風邪のような症状になり、今は咳と鼻だけが長引いているということでした。いつもなら体を休めて養生をしていれば徐々にでも治ってくるところが、今回は1ヶ月を超えても症状の改善が無く、逆に咳き込みが激しくなっているような感じもあるということでした。
30代の若い男性なら、養生していれば普通なら徐々に治って良くなってくるべきところなのに長引いて治ってこない、この原因を疲れと取り、労復病(ろうふくびょう:疲れてなかなか元の状態に回復できない病)に載っている脾胃を補いながら肺の熱をさまし咳込みや逆上気(ぎゃくじょうき:気が上にこみ上げてくる)を治す竹葉石膏湯(ちくようせっこうとう)と、今年は火運不及で血の力が弱っていることから疲れが回復できてこない大元の原因を過労と亡血(ぼうけつ:血が弱り失われるほど弱っている)として捉え四逆加人参湯(しぎゃくかにんじんとう)も一緒に飲んで頂くように致しました。1週間分お出し致しました。
1週間後にご来店されご様子をお伺いすると、以前より良い感じはするがまだ咳は治まっておりません。
普通の状態であればこれで治まってくるイメージなのですが、病が相当深いことが分かりました。
改めて今の状況を詳しくお聞きしていく中で、日中(午前中)くしゃみをすることがあるということと、朝起きてから痰、薄い鼻水が出る、というところから冷えていることが分かりました。自覚症状としては寒気も、手足の冷えも全くありません。ご本人様は温かい飲み物しか飲まず、水分量も取り過ぎないように気を付けており、防寒もしっかりして、湯船もつかり、生ものやヨーグルトなどの冷蔵庫の中のものは一切取らない、クーラーなどにも気を付けて冷えないように徹底していますので、全く冷えは感じておりません。しかし、証としては冷えていると私は考えました。咳の出方も普通ではないほど激しいので、胸の痛みはなく、脈も浮滑(ふかつ:ういていてクリクリと力強い感じ)ではなかったですが、状態を浮滑、小結胸(しょうけっきょう:胸に熱と水が結して固まっている)として捉え、小陥胸湯(しょうかんきょうとう)と、桂姜棗草黄辛附湯(けいきょうそうそうおうしんぶとう)をお出し致しました。
数日後にご来店されご様子をお聞きすると、ほぼ治りました!とのことでした。
もらってすぐ飲んだところ咳き込み回数が顕著に減り、また2〜3時間経つと咳が多く出だしてくる、なのでまた飲むとすぐに回数が減る、1日3回のところを1日5回ほど飲み、日に日に回復していき4日ほど経って今はようやく治ったような気がする、職場の人からも咳が辛そうにしていたのに、薬を飲んだら明らかに回数が減りよく効く薬だね!と言われたほど 今は咳もほとんど出ず症状もないのですがもう少し飲んでおいた方がいいものか、どうでしょうか? と尋ねられました。
症状もほぼ無かったので一旦様子を見るようにお伝えしたのですが、すぐ翌日に来店され、また激しい咳が出てきたということで同じ処方を5日分お渡しいたしました。ほぼ治っている状態からまた咳き込みが出てきたという事は、まだ完全に取り切れていなかったという事になるかと思います(本人にも確認し養生などはしっかりとしているとのことでした)。
お渡しした翌日にご様子をお伺いした所、やはりこの漢方薬ですごく咳が楽になりほとんど出なくなる、とのことでした。
さて、ここで昨日の症例と本日の症例を見ていく中で私が感じたことを書かせて頂きます。
(※少し専門的になりますので興味のある方のみお読み下さい)
今年は火運不及(かうんふきゅう)の年です。血の力が弱まると言われている年になります。
血の力が弱まれば、脾胃の力も弱り、肺や皮膚の力も弱ります。また皮膚は冷えやすくなります。
今年は夏の暑さが長く続き、クーラーや冷飲食物の影響も大きく、そこに急に朝晩を中心に気温が下がり涼しく秋らしくなりました。皮膚の守りは相当弱り、皮膚の親である肺からの咳や鼻水は出やすくなると考えられます。
腎臓は心臓や血液の力を土台としておりますので、本日の症例の方のように腎機能が元々弱い方は今年は体調を崩しやすいと思われます。
恐らくこれらの影響もあり、ここまでひどく長引く咳になったのではないかと推測します。
昨日の症例の人、本日の症例の人にお出しした漢方薬で共通する処方が「桂姜棗草黄辛附湯(けいきょうそうそうおうしんぶとう)」になります。
これは漢方の教科書である金匱要略(きんきようりゃく)では水気病(水、むくみの病)で出てくる処方になります。
あまり難しくなるのも良くないのですが、この処方は麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)という処方と桂枝去芍薬湯(けいしきょしゃくやくとう)が合わさっている処方になります。麻黄附子細辛湯は傷寒論では少陰病(しょういんびょう)に出てくる処方になります。少陰病は手の少陰心経(しょういんしんけい)と足の少陰腎経(しょういんじんけい)に影響が出る病なのですが、簡単に言うと、腎臓や心臓の血液循環の力が弱っている人に良く使う処方になります。
今年は心臓の血液循環の力が弱り、その影響で腎臓の土台も弱るとされている年です。➡麻黄附子細辛湯
ここ1〜2週間ほどで急に秋らしくなり皮膚は思いのほか冷えを感じやすくなっております。➡桂枝去芍薬湯(太陽病処方:皮膚に陽気を補います)
この2つの影響を考えれば、少し水の症状(鼻水など)があっても(水気病にも効く処方ですので)、この桂姜棗草黄辛附湯が合う方が多いというのも納得できるところかもしれません。
何かお困りごとがございましたらツルガ薬局 松原店までお気軽にご相談下さい♪
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ここ最近咳が長引いている人が多くいらっしゃいます。
今回はいくつかの症例をご紹介しながら考察を書かせて頂きたいと思います。
『40代男性 前日の夕方から急に鼻水が出るようになり、鼻詰まりと倦怠感を伴い、喉痛が出てきそうな感じ
トイレに全くいかない(いつもなら午後3〜4回程行くところが1回)、冷えは自覚無し
とにかくポタポタ垂れる大量の鼻水を何とかしたい、また長引いてこれから熱が出てきたり進行しないように早く治したい 』
原因を探ると、特別なきっかけとなることはありません。
ただ、ここ数日から急に秋らしくなり朝晩気温が下がってきている中で、まだ半袖で過ごしておられます。
またお聞きすると冷たい飲みものは気を付けて取り過ぎないようにしているというものの夏と同じような生活はされているようです。
桂姜棗草黄辛附湯(けいきょうそうそうおうしんぶとう)をお出し致しました(+瑞芝、ルミン、コンク)。
この方はいつも漢方薬をお出ししている方なので体質は分かっております。
今の秋の時期、肺の働きが頑張っており、皮膚の守りも同じように頑張って守ろうと働いております。その時にご自身では冷えを感じていなくても意識していなくても、体は感じています。その冷えは体表面の一番外にある皮膚がセンサーとなり外気として冷えを受けます。皮膚が冷えれば、その親である肺も冷え、それが腎膀胱系に伝わり(相生:そうせい 助け合いの関係)、トイレの回数が減ったと考えました。皮膚が冷え、腎臓から水分が正常に出せなくなれば、水は胃にあふれ肺に上り、肺の上部の出口である鼻から漏れます。これが止まらない鼻水です。小青竜湯(しょうせいりゅうとう)もこのような時にお出しする漢方処方にはなりますが、この人の場合は、小青竜湯では十分温まらないほど冷え方が強く(昔同じような時に単独では効かないことを経験済み)、附子剤がある方が回復が早い人です。それだけ肺気が元々弱い(お腹特に大腸系が弱い体質)人なので、附子の表を実して陽気を増す生薬の力が必要になると考えられます。
もう一つ付け加えますと、とにかく皮膚を温めて補いたかったため、桂枝と麻黄の2味が外を中心に働く小青竜湯よりも、桂枝湯(けいしとう)や麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)などの処方をベースにした今回の処方に致しました。桂枝湯は体の土台である脾胃(ひい:胃を中心にした消化器系)を補いながら皮膚に陽気を与える漢方薬になります。小青竜湯の五味子(ごみし)や乾姜(かんきょう)よりも桂枝湯の生姜や甘草や大棗を優先致しました。また小青竜湯中に入っている麻黄(まおう)は表(ひょう)の裏、ちょうど血脈のところを温め、毛穴を開き発汗を導く働きもありますので、血の陽気(血液の力)が低下しないようにも考慮しての処方になります。
長袖を着て頂くこと、おかゆで胃をしっかり温めることなどの養生法もお伝えして漢方薬を服用頂きました。
夜中に少し熱っぽくなり喉や鼻のあたりに痰などの熱感がこもったということでしたが、一番辛かったポタポタ垂れる鼻水の方は翌日には嘘のようにしっかり止まったとのことでした。2日目の午前中に喉がイガイガしてきて咳が少し出るという事で再度ご相談を頂きました。もうその時には、冷えもあまりみられなかったため桔梗湯(ききょうとう)を追加してお出し致しました。
数日後にご来店頂き治ったことをご報告頂き、詳しくその後の経過も教えて頂くことが出来ました。
桔梗湯は1包服用しただけで喉のイガイガと咳は治まり、夕方前くらいになると大変喉が渇いてきて大量に水分を取り、その後はすごく調子が良くなり、いつの間にか治っていましたとのことでした。
漢方の教科書「傷寒論(しょうかんろん)」の条文にもしっかり載っているのですが、この喉が渇くという現象は風邪を治していく上で非常に大切なことになります。簡単に言うと、体の土台となっている脾胃に陽気が戻ってきている印になります。これを作っていかないとなかなかこの時期の咳や鼻は治りません。この人はほぼ聞いていると2日で治った感じですが、養生がしっかりとされて、漢方薬や飲食物も徹底されていたため、2日で陽気を戻すことが出来たということになります。
本日はここまで、明日また続きを書かせて頂きます。
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2022年12月某日 50代の男性のご相談です。
目が見にくい、というご相談でした。
お聞きすると、パソコンやスマホをずっと長時間見ていると一般的に目がショボショボしてきて、目のピントが合わなくなり
目を開けてられない状態になってきますが、そういう状態が朝起きた時からある、ということでした。
視界が少しぼやけていて、パソコンを少し使う仕事なので画面が見にくいため何とかしたいというご相談でした。
ご自身では思い当たることはないが、強いて言えば年末で忙しいことくらいで、
それ以外はいつもと変わらない生活をしており、特段目を長時間使った記憶もない、
今までになったこともなく、病院の薬は何も飲んでいない
さて、この方もご自身では原因が分からないという事なので、そうすると運気とこの時期の影響を考える必要があります。
まず目は肝臓の状態が反映される場所です。また物を長く見たり、心気(心臓のエネルギー)を使う場所でもあります。
肝臓では血を蔵(ぞう)し(貯蔵)、心臓では血を巡らせています。
つまり血液の状態が現れる場所とも言えます。
冬の季節は心気が抑えられやすい時期になります。
また年末の忙しさから心気不足もありそうです。
また2023年は火運不及の年で心気が弱りやすい年であり、その影響はもうこの冬に現れてきておりますので、
これらを考慮して問診すると、小腸の弱りがありました。
小腸は心臓の表です。表裏の関係から、心臓の弱りが目の症状を出しているのではないかと予測できました。
心気を補い、小腸の熱気を通じる漢方薬を3日お渡し致しました。
後日、ご来店された時にご様子をお聞きしたところ、3包(3回)ほど飲んだところで、その日のうちに治りました!とご報告頂きました。
それ以降は症状は出ていないようです。
この方も、来年の運気(火運不及)の影響が絡んでいる症例でしたので、ここに書かせて頂きました。
心・血が弱らないように、十分気を付けていきましょう。
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2022年12月某日
40代女性の頭痛の相談です。
いつもは生理に絡んでの頭痛があった時は、子宮の熱を和す漢方薬で良くなる方です。
数日前から頭痛があり、いつもの漢方薬では頭痛が楽にならないというご相談でした。
原因はご自身では思い当たることがないということでした。
先日書きましたが、2023年は火運不及(かうんふきゅう)の年で、血液・心臓・循環力が弱る年です。
もう11月頃からその影響、弱りが出ている人が多くいらっしゃいます。
手足の冷えもあり、少し疲れがありそうな様子が見えましたので、傷寒論・金匱要略の条文(4か所に掲載)が頭に浮かびました。
参考)太陽病中64条、厥陰病48条、臓腑経絡先後病14条、嘔吐噦下痢病39条、(可発汗6条)
「傷寒医下之続得下痢清穀不止身疼痛者急當救裏後身疼痛清便自調者急當救表救裏宜四逆湯救表宜桂枝湯(太陽病中64条)」
この条文の状態を基本とし、応用としてこの方に合った漢方処方に変えていきます。
亡血(ぼうけつ:血が弱った血虚よりももっとひどく弱って血が失われほろびそうなほどの状態)を補う漢方薬を最初にお湯で溶いて服用して頂き、その後に血の冷えを補い表の気を巡らしてあげる漢方薬を服用するようにご説明いたしました。
あとから聞いた話なりますが、1〜2時間もしないうちに足の裏が温かくなり、手も温まり、汗が出て、頭痛も良くなりました、とご報告頂きました。
効いたということは、考え方と体の状態の捉え方が間違っていなかったということですから、やはり来年の運気の影響もあり、またこの時期の冬の心血が抑えられる状態も関係していた、ということが分かります。
2023年は特に心臓と血液を弱らせないように気をつけましょう!
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先月(2022年11月)にご相談された30代男性の症例になります。
舌の根本の裏側に出来物ができて唾を飲み込むだけでも痛みがあり、1週間以上経つが治る気配がないので、何とかしてほしいというご相談でした。
痛みの程度は非常に激しく、寝ているときでさえ無意識にだ液を飲み込むときの舌の動きで痛みが出るため、ぐっすり眠れないほど
今までここまで激しい舌炎は起こしたことがなく、舌の根本にもこれほど大きな出来物(キズ)はできた経験はない
痛みが激しいことと、全く良くなる気配がないので、舌ガンではないかと不安に思い、病院へ受診するもガンの心配はないと言われ塗り薬だけもらうが一向に良くならない
舌以外、気になる症状はなし
やはり原因が大切ですから、お伺いしたところ、いつもと特に変わったことはしていないし思い当たることはない、とのことでした。
お聞きしているうちに、やはり舌の症状が出てくる前は、少し食べすぎ、ラーメンなどの偏りがあったように感じました。
食欲もあってよく食べて、冷えはないですし、時期的に11月7日以降の冬に入ってから出てきていますから、
体のバランスでみると心や小腸、血液、脈系の働きが抑えられる季節の影響がありそうです。
ストレスは本人はあまりないということでしたが、血液の熱と心気(しんき:心臓や血脈を正常に働かせる気)不足を考え、
四黄瀉心湯を3日分お出ししました。
3日後にご来店
飲むといい感じがするが、まだ痛いし小さくなって来ない、とのことでした。
もう症状が出て10日ほどになります。
食事や生活の養生はしっかりされておられます。
それでもまだ治ってくる感じがあまり見られません。
この人は今までも漢方を何回かお出しさせて頂いておりますので、体質はある程度把握しております。
若くて冷えは無いのですが、表の陽気は少し弱っている感じが見えます。
舌は粘膜であり、体の表面を覆っている皮膚を大きくみれば唇、口内、舌も皮膚の一部です。
表の陽気が弱れば、皮膚や粘膜の治りも悪くなります。
そして今年は木運太過(もくうんたいか)で肝に熱がこもりやすくなります。
血に熱を持ち、心気不足になると、肝にも熱を持ちやすくなります。
心も肝も血液の状態がよく反映される場所になります。
最初にお出しした四黄瀉心湯の状態は必ずありますから、これらを考慮して心ではなく肝の方に中心にいく処方を考え、3日分お出し致しました。
3日後ご来店
相当良いです!かなり治りました!と、喜びのご報告を頂きました。
処方を変えてからは舌の傷が日に日に治ってくることが実感できたとのことでした。
その後3日分同じ処方をお出しして、激しかった痛みが完治致しました。
さて、この方の症例・ご相談を受けてすごく勉強になったことがあります。
それはその年の運気です。
2022年の木運太過のことを考慮したことで処方変更ができたことと、
いつもと同じようなことをしていても、ここまで激しい出来物はできたことがなかったその人が、
なぜここまで激しい、しかも1週間以上治ってこないような状態になったのか…この原因も運気です。
来年2023年は火運不及(かうんふきゅう)の年になります。
冬は来年の運気の影響も重なって出てくる方が多いのです。
火運は心であり、舌です。ここが不足、弱りが出やすい年になりますので、
その影響を受ければここまで激しい状態になるのかと非常に勉強になりました。
2023年の火運不及の年の運気については、また近々このブログで書きたいと思います。
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1日分で劇的に良くなったとご報告頂いたので、ブログにも残そうと思い書かせて頂きます。
先日店頭にご相談に来られた40代の男性、相談内容は耳鳴りでした。
耳鳴りは両耳で、こもったように耳が遠くなり聞こえにくい、
数日前から始まり、治る気配がないので漢方薬で治したいとご来店
今まではもっと軽い感じで一時的になる耳鳴りはあった(数時間や長くても寝れば治るくらいの耳鳴り)
数日をまたいでも治らないのは初めてで、良くなってくる兆しもなくて不安
自分では思い当たることがない
その他で気になる症状は無し
さて、耳鳴りに限ったことではないのですが、上記のようにご本人様の思い当たることもなく、なぜなったのかが分からず症状や病気になってしまい、ご相談されるケースが大変多いのが現状です。
特に漢方薬を出す上では、原因が分からなければ的確な漢方薬を選ぶことが出来ません。
なぜなら漢方薬は自然治癒力が正しく働けるように助ける薬なので、その原因が何であるか、体の状態がどうなっているかによって全く異なる漢方薬になるからです。
見えない情報や状態は、問診で聞き出しながら予測していかなければいけません。
色々と問診していくと
・少しずつ気温が下がってきている中で、寒さを感じる時がある(朝晩)
・症状が出始めた時期は冬に入ってから(2022年11月7日から冬入り)
・朝方、トイレに2〜3回起きることがある(寝る前に果物)
・週に数回ビール1本ほど飲むときあり
・朝起きた時、肌寒い感じがして、起床した時から耳鳴り有り
水と冷えが関係しているように見えたので、冬にも入って気温も下がり体表部の陽気も不足してきているのを補うのにも良いと考え、桂姜棗草黄辛附湯(けいきょうそうそうおうしんぶとう)を7日分お渡しいたしました。
7日服用後ご来店
あまり変化なしとのことでした。
何か体調変化、普段と変わったところがないかどうかを再度お聞きしてもないと言われます。
自然の中での体の変化を考えると、冬は腎の働きが高まり、心の働きが抑えられやすくなります。
心の働きは血液の循環であり、血液の循環は体内の熱を体全体に行き渡らせる働きです。
この働きが弱りやすい季節に入ってから、この人の耳鳴りは起こっています。
外気温が下がり皮膚が冷えている感じはありますので、桂姜棗草黄辛附湯で効かないとなると、血に絡んでいる可能性が考えられます。
血に絡めば、お腹の具合で便が緩くなったり、ゴロゴロしたり、手足が冷え上がってきたり、頻脈・動悸・不整脈など心臓にもトラブルが起こりやすくなるはずです。
改めて確認してみると、そういえばお腹の調子が最近悪かったという事を言って頂けました。(手足の冷えは無し)
いつもなら下痢しないのに、少し下痢(水みたいな感じではなく、渋り腹のような感じ)になったとのことでした。
これは、水剋火(すいこくか)で心血(しんけつ)の働きが弱って起こっていると予測できます。
心の裏は小腸であり(臓腑の関係)、太陽小腸経(たいようしょうちょうけい)で見れば耳の前に「聴宮穴(ちょうきゅうけつ)」がありますので、冷えてめぐりが悪くなれば耳の働きは落ちることがあります。
こう考え、当帰四逆湯(とうきしぎゃくとう)を7日分お渡しいたしました。
そうしたところ、その日すぐにご連絡があり、1包飲んでしばらくしたら知らない間に耳鳴り治っていました!!ありがとうございました!と大喜びのご報告を受けました。
ご自身では気付いていなくても、体は自然の流れ(四季・土用)の影響を受け、何か小さいサインを出しているものです。
改めて漢方薬の素晴らしさを実感できた症例でした。
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今回は久しぶりに症例を書かせて頂きたいと思います。
なかなか書く時間がなくて、症例の紹介が出来ていませんでしたが、
つい先日、身近な関係の子供さんが高熱を出され、
漢方薬で劇的に良くなった症例をご紹介させて頂きたいと思います。
その子供さんは5歳の男の子です。
急に朝ぐたっとなって、母親が熱を測ったところ39℃ほどあったためびっくりして、
すぐ病院でコロナの検査をしたところ陰性で、解熱剤(アセトアミノフェン)の飲み薬が出されたようです。
解熱剤を何回か飲ませてはみたものの、そこまで解熱ができず、子供がぐたっとしているということで
夕方、一緒に飲ませられる漢方薬はありますか?と問い合わせを頂きました。
状態をお聞きすると
のどの渇きはなく、ずっと横になっている
熱が38℃を切ることがない
汗は出ていない
せきや鼻水はない
食欲無し、朝から何も食べない
原因、思い当たることもなしとのことでした。
冷たい物は普段と比べて取っていないが、強いて言えば寝る時にクーラーをかけていて
朝方少し寒いと自分自身が感じたのでもしかすると冷えたのかもしれないとのことでした。
風寒を原因として、麻黄湯を飲むようにお伝えいたしました。
翌日の朝お電話を頂いたところ、まだ熱が下がっておらず、食欲もなく昨日と同じでぐたっとしているということでした。
汗を確認した所、汗が思ったほど出ていないということでした。
皮膚は触ると熱がこもっていて熱いということでした。
でも汗が出ない、麻黄湯を飲んでも出ていない、これをどう考えるかです。
実際に麻黄湯は毛穴を広げて発汗作用がある漢方処方ですが、
麻黄湯で発汗しない、できない人で表の原因が大きい場合は桂枝湯で発汗できる人がいらっしゃいます。
こういう人は脾胃の力と冷え(生姜・甘草・大棗)、表の陽気不足、皮膚のもつれ等が要因と考えられます。
この子の場合も昨日からほとんど何も口にできていないので、
コンクレバン、瑞芝などのドリンクを飲ませてあげることはお伝えいたしました。
また状態をお聞きしている中で、長袖長ズボンはしているものの、ずっとクーラーの部屋にいる、
寝る時もクーラーの部屋とのことで、汗がかける環境にないことが伺えたので、
その時の気温を考慮してもクーラーは止めてもらい、汗をしっかりかけるようにすることを説明させて頂きました。
そのうえで状態を考えると、皮膚の裏の熱が強いため汗としての陽気の発散がうまくできていないと考えられました。
そこに石膏を使い、発汗するに必要な脾胃の力を高める生薬が入っている発汗剤である桂枝湯(半量より多め)と
麻黄湯(半分より少なめ)の助けがいると考えました。
生薬構成から行くと、大青竜湯(だいせいりゅうとう)のような感じになります。
ただ5歳の子供で、昨日から何もほとんど食べれていない状態を考慮して、量と生薬構成を加減しなければなりません。
違う処方から表現すれば、桂麻各半湯(けいまかくはんとう)に石膏が入ったような、
もっと細かく言えば桂枝二麻黄一湯(けいしにまおういちとう)加石膏(かせっこう)湯のような処方です。
朝イチでお薬を取りに来られ、すぐ帰宅後この漢方薬とコンクレバン、瑞芝を飲ませてあげたようです。
お昼頃に私の方から電話でご様子をお伺いさせて頂きました。
そうしますと、朝は漢方薬とドリンク剤だけで病院の解熱剤は飲ませていないが、
汗がしっかりと出てさっき測ったら36.7℃で熱が平熱に戻り、すごく元気になって、うどんを2杯食べました。
今は走り回ってます、とのことでした。
これを聞いた時に、私自身も驚きました。
私は病院の解熱剤も一緒に飲ませてあげて下さいとお伝えしたのですが、
お母さんは漢方薬だけで様子を見たいと解熱剤は飲ませていなかったのです。
それでも予測していた通り、出なかった汗がしっかり出て、その子供自身の自然治癒力が働き、
ものの1〜2時間で自身で解熱できたのです。
本当に漢方薬というものはすごいですね…。
つっかえている所を取ってあげて、体が治そうと頑張っている状態を捉え助けてあげる
適切な処方で助けてあげれば本当にその人の治癒の助けになるものだと、また再確認することが出来ました。
昨日その方がお礼にご来店された時に、その後の経過を聞いたところ、
あれからずっと元気で、一度も熱がぶり返すこともなく、
病院でもらった解熱剤も一切飲まずに治りました、ありがとうございました。
と言って下さいました。
今の時期39℃の高熱が出ると、大抵はコロナ陽性と診断される人が多いので、
もしかするとその時は陰性でも、数日後には陽性になる可能性があったかもしれません。
しかし、コロナ陽性でもコロナ陰性でも、漢方薬は変わりません。
その人のその時の状態と病の原因に対して助ける目的で漢方処方を考えますので、
病名はあまり重要ではないのです。
もし今、何かお困りの症状や病気があり、
なかなか思うように改善していない状態がございましたら、
お気軽にツルガ薬局までご相談くださいませ。
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先日報告頂いた、妊婦さんのお腹のハリが劇的に良くなった症例をご紹介いたします。
妊娠6カ月になりお腹も大きくなって来られた30代後半の女性の症状です。
ご夫婦でご来店され、お腹のハリが和らぐような漢方薬はありますか?とのご相談でした。
詳しくお聞きすると、毎日お腹が張るわけではなく、
原因が分からないけど昨日から右側の鼠径部(そけいぶ)の上の辺り
(下腹らへん)からみぞおちの右の辺りにかけて張る感じがある、
とのことでした。
今までも何度か同じ症状は出ているが、原因・思い当たることはなく、
数日安静にして自然に落ち着くのを待っているとのことでした。
漢方薬を出すときには、やはり原因が非常に大切です。
妊婦さんの血が弱ってくることによってお腹が張っているのか、
冷たい物を取って冷えてお腹が張ってきているのか、
逆に熱がこもって、気がこもって起きているのか、
それとも水の停滞があるのか、
原因と状態と体質が分かることで私は漢方薬が決まります。
症状や病には、必ずきっかけや原因があります。
思い当たることがなく、自身でも気付けないケースがほとんどですが…
ご夫婦と話している中で、ここに具体的に書くことはできませんが、
「不安感」が根元にあるように感じました。
病院の受診日が近づいてくると症状が起きやすくなるようでした。
これはご夫婦ともに自覚されておりませんでした。
(言われるとそうなのかな…というくらい)
本人の中でもはっきりと意識できないほどの、
潜在意識の中にある不安感です。
何回目の出産であっても必ず不安感はあろうかと思います。
気持ちを前向きに強く持って、心配なことや
マイナスなことは考えないように、気にしないように
されておられる気丈な方でしたが、やはり体には
その影響が現れてきます。
心と体は一つです。
この方の場合は、潜在意識の不安感が恐怖感に変わり、
子宮・腎から上に気が突き上がって、
お腹のハリが起こっているのではないかと捉えて、
漢方薬をお出し致しました。
そのご夫婦が帰宅されてから、すぐにお電話がありました。
「帰って1包飲んで、まだ10分も経っていないと思うんですが、
症状が取れました!!
お腹のハリがなくなりました!!こんなに効くんですか!?」
ご報告頂き、大変嬉しく思いました。
この漢方薬で効いたということは、やはり上記に書きました
ような原因・状態があったという事で間違いないと思われます。
数日は漢方薬を飲みきり、緊張や不安を感じられるようなら、
また継続して飲んで下さい、とお伝えさせて頂きました。
漢方薬は状態に合っていれば無理やりなことはしません。
その人自身でバランスを取り治していく時の手助けを
してくれるものです。
この方のようにちょっと漢方薬で手を添えてあげるだけで
症状が落ちつくこともあります。
もし何かお悩みの症状がございましたら、
ツルガ薬局 松原店までお気軽にご相談下さいませ。
ちなみに、この方にお出しした漢方薬は、
漢方薬の教科書 金匱要略(きんきようりゃく)の
奔豚気病(ほんとんきびょう)編に記載されている処方になります。
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先日の症例をご紹介いたします。
2022年(木運太過)4月19日ご来店 30代女性
先週(4/11〜4/16)くらいから軽いムカツキ、気持ち悪さがある
それと同時にスマホを見ていると10分くらいするとふわっーとしてきて、目を開けて見ていることができなくなる
耳の後ろから後頭部全体にかけてボワーンとしている感じ
以前はメニエールになり耳鼻科でイソソルビドなどが処方されしばらく通ったがなかなか良くならなかったことがあり
その時は目をつぶっていてもグルグル回っていた、今回はそこまでではない
原因、思い当たることをお聞きすると、ここ1カ月子供や職場のコロナ関係で、自宅待機や検査等で子供とこもっていることが多く疲れたとは感じるので、これかなぁとのこと
生理をお聞きすると先週がちょうど排卵
舌→濡れて赤
胸のもやもや、落ち着かない感じあり
便→どちらかというと緩いかもしれないが普通
さて考察するに、病が起こり始めた時期から考えると、春の土用(2022年4月17日から)の影響が考えられます。
今年は木運太過(もくうんたいか)の春の土用ですから、胃腸症状を訴える人が大変多くいらっしゃいます。
この方もその影響を受けていると思われます。
長くスマホが見れないということは、「久視(きゅうし:長くものを見る)血を傷り 心を労(ろう:疲労)す」から考えれば、心(しん)の気の衰えと考えることもできますが、この人の場合は目の状態が現れる肝のエネルギー不足と考えました。(いくつかの理由からこう考えたのですが、専門的になるのでここでは省略させて頂きます。)
始めの方は、土用と木運太過の影響で脾胃(ひい:膵臓・胃を中心とする消化器系)に気がこもっていると考え、この気の痞えを取ってあげることを考えておりましたが、舌の状態を見た時に濡れ具合が気になり、大元の原因がただの気の痞えとは違うと感じました。
そこで、のどの渇きや水分の取り方を確認したところ、すごくのどが渇き、さっきも2杯お茶を飲んだところ、だからトイレもすごく行く、ということが分かりました。
これで全てがつながりました。
土用の時期は、脾胃に力をもつために腎の働きが抑えられやすくなります。腎は水をさばく場所です。つまり土用の時期は体内の水はけが悪くなります。
ご自身では小便の出はよく、飲んだ分だけはトイレに行っているとは表現はされているものの、自分で気付いていない処理できていない水分が脾胃に滞っているのです。
そのため、その水が邪魔をして肝の気のめぐりを悪くして、肝が主(つかさど)っている目に症状が出ているのです(長く見ることが出来ない)。
またこの水が原因で、「耳の後ろから後頭部全体がボワーンとしている」という症状がでていると考えられます。
漢方用語では「冒(ぼう)、又は頭冒(ずぼう)」と表現されます。
水から来る冒には、半夏(はんげ)や沢瀉(たくしゃ)、白朮(ビャクジュツ)、五味子(ごみし)、などの生薬がよく効果を現します。
脾胃の周りに水分があるために気持ち悪さ・ムカツキも感じるのです。
ここの働きを助ける漢方薬を3日分お分け致しました。
帰り際に養生法をお伝えしている中で甘いものをとっていないかお尋ねすると、甘い物が最近非常に食べたくなりよく取っていた、とおっしゃられておられました(昨日すごくシュークリーム食べたくなり食べた)。
土用に甘いものを取り過ぎると、偏りが激しくなります。病の原因になりやすいのです。
3日後来店(4月22日)
「店で1包飲んで帰ったらすぐに楽になり、その日は寝る前にもう1包飲みました。
もう翌日には気持ち悪さも、頭のボッーとした感じも取れて、スマホも10分以上見ても大丈夫になりました。
仕事で昼の分を飲めなかった時は、やはり少しムカツキが出てくる感じがするが、飲めばすぐ楽になります。
今日は漢方薬もなくなり飲んでいなかったのですが、スマホを見ているとまたムカムカしてくるので同じものを下さい。」
とご報告いただきました。
以前からよく尿は出ていたが、漢方薬を飲むようになって私が考えていた通り、1回の小便の量が更に増えたとのことでした。
同じ漢方薬を4日分お渡しいたしました。
4日後にご来店され、「もう症状は全くないのですが、まだ飲んでおいたほうがよろしいですか?」と質問されたので、一旦やめて様子を見るようにご説明させて頂きました。
やはり原因とその人の状態をきちんと捉えて、なぜその症状が出てきたのかをきちんと理解することが大切ですね。
今年はゴールデンウィークの5月5日までは土用になりますので、体調管理には十分にお気を付けください。
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40代の女性のご相談です。
昨日から始まった生理痛と、それに伴う胃が下から持ち上げられている感じがして吐き気がするというご相談でした。
いつもは生理痛や生理症状はほとんど感じないのに、今回は症状があり、アセトアミノフェンの痛み止めを服用しているが思っているほど効いてこないので何か漢方薬作って頂けませんか、というご相談でした。
この方は以前も漢方薬をお出ししている方なので、体質は分かっている方です。
舌を見せて頂き、周囲はうっすら濡れてはいましたが、中心から大部分は乾いていて、うっすら白い苔がありました。
生理の時は、血液が血室(けっしつ:血をため込む部屋)に集まるため、熱がこもります。
その熱のために、生理痛と胃が下から持ち上げられている感じがして吐き気がするという症状が出ていて、この熱の痞えがあるがゆえに気血のめぐりが悪くなり、アセトアミノフェンの痛み止めが十分に効いてこないのです。
この血室の熱を取る漢方薬を2日分お渡しいたしました。
2日後にご来店。無事治まりました、とご報告頂きました。
詳しく経過を教えて頂けたので、書かせて頂きます。
「漢方薬をもらってから、帰宅後すぐに1包服用し、3時間くらいして胃が下から持ち上げられている感じと吐き気が楽になり、もう一度寝る前に漢方薬と痛み止めを服用したところ、今まで効いていなかった痛み止めがスッと効いてくれてそのまま眠れました。翌日には生理症状も気にならないくらいまで回復し、痛み止めはもう飲まずにすみ、残りの漢方薬だけ飲み切るようにしました。」
今年は木運太過(もくうんたいか)で、今は春です。
血室である木運の肝に特に熱がこもりやすくなります。
普段とあまり変わったことをしていなくても、体の状態と働き方は自然と共に影響を受けていますから、いつもは無い生理症状もこの時期なので現れてきたのだと思われます。
何かお困りの症状がございましたら、いつでもツルガ薬局までご相談下さいませ。
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30代女性の不妊症のご相談です。
昨年の9月から妊活を始めたが妊娠せず、11月から病院にも受診し治療している。
生理は今まで28〜30日でしっかり来ていて、止まることも乱れることもなかったのだが、11月に初めて生理が止まって来なかった。
自分では恐らくストレスのせいだと思う。(コロナの予防接種はしていない)
生理が止まったときには病院から排卵誘発剤が処方され、現時点では生理はあり。
年齢的にも、早く妊娠したい気持ちがあるので、なんとか漢方薬で妊娠したい、とご夫婦で来店。
体全体のご様子と体質、食生活などをお聞きして、体質に合った漢方薬(妊娠しやすくなるように体を調え手助けする目的)をご提案致しました。
服用して1カ月ほど経った頃、お電話で妊娠できたことのご報告を頂きました。
バランスを調えるだけですぐにご自身で妊娠できる体力のある人は、結果が出るのが早いですね。
最近増えている不妊症のご相談では、体力のない人が非常に多い印象を受けます。
体の力が無いと、漢方で働きを助けて調えるだけではなかなか結果はすぐに出ません。
不妊のご相談に来られる方々は、病院にもかかっている人が大部分です。
病院に受診して頂くことは悪いことではないですし、利用して頂くことは私は賛成です。
ただ、病院にかかってさえすれば病院が妊娠させてくれる・治してくれるということではありません。
病院では体作りをしてくれません。体作りは日々のご自身の食事や生活の積み重ねで作られていくものになります。
漢方薬もその体作りの一つとして大変役立つものになります。
体作りのご相談は、ツルガ薬局の得意とするところになります。
もしご自身で精一杯されていてもなかなか改善が見られないときや、より早くより良くしていきたいとお考えの方は、お気軽にご来店、ご相談下さい。
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先日の症例をご紹介させて頂きます。
娘さん(大人)の咳のご相談です。ご来店されたのはお母様です。
病院ではフスコデとカルボシステインが処方され、服用しても全く咳が治まらないというご相談です。
数日前から起こり、回復に向かう様子もなく、夜特に咳き込みがひどく寝られないほどでとても辛そうだということです。
通常は、フスコデなどの咳止め薬は服用すれば数時間は咳の回数を抑えるように作られているのですから、個人差はあれど服用後数時間は少しでも軽減されているはずだと思われますが、お母様がおっしゃられるには効いているようには見えないほど変化が無いとのことでした。
咳止めに限らず、解熱剤や痛み止め、風邪薬であっても、服用して薬の効果を出させるのは、その人自身の力になります。体は治そう、治そう、と頑張っていますから、これが自然治癒力になりますが、この治す力がきちんと働きやすい状態にしてあげることが大切です。
いくつかの問診で、冷たい物を飲んで胃と肺を冷やしている状態が伺えましたので(生理にも絡んでいませんでした)、肺を温めて冷えた水分のさばきをよくする苓甘姜味辛夏仁湯(りょうかんきょうみしんげにんとう)という漢方薬と咳止めを2日分お渡しさせて頂きました。
この苓甘姜味辛夏仁湯にした理由は、店頭に来られていたお母様の体形と体質から推察して決めました。
3日後に再度ご来店され、とても良くなった(2日で10の症状が3くらいになった)ご報告と、あと少しで完治しそうなのであと2日分欲しいとのことでした。
ちなみに、漢方薬と一緒に服用して頂いた咳止め薬は、フスコデとほぼ同じ薬です。
フスコデとカルボシステインでは全く変わらなかった咳が、上記の漢方薬と合わせることで効き目が発揮されたということになります。
人の体というのは、何か弱ったり偏ったりしていれば、必死に元に戻そう、治そうと頑張っています。この働きがスムーズに働けるように、原因と状態、体質をとらえて漢方薬を利用して頂くことは、非常に有意義なことだと思います。もしスムーズに回復していない、効くべきところが効いてこない、というお悩みがございましたら、ツルガ薬局 松原店までお気軽にご相談下さいませ。
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今日は症例をもとに考察も記載させて頂きます。
36歳男性
主訴:胸が苦しく、うまく息が入らない感じがする、自分で運転する車の中などで不安感が出たり、うまく息が入らないためか咳き込むことあり、症状は夜ひどくなる時多い、夜中に寝れずに座って息することあり(倚息:いそく)、こういう症状は1年くらい前から起こり、なったり治ったりを繰り返している、タバコは吸う、冷たい物は好きで年中取っている、夏は毎日症状出る、車で遠出した時や冷たい物を多く取った次の日に症状出ている感じはする。診療所にいくと、タバコからくる不安症と言われお薬が1種類出たが、服用しても効かない。
この方は、頭痛もよく起こり呉茱萸湯(ごしゅゆとう)で治る方です。今回は、家にあった呉茱萸湯、五苓散(ごれいさん)、小青竜湯(しょうせいりゅうとう)などは飲んだが、小青竜湯は飲むと少し楽にはなったが、症状は取れないとのことでした。
さて、どう考えるかなのですが、元々この方は冷たい物がお好きで、呉茱萸湯が良く合う方です。
呉茱萸湯は、胃と肺を温める漢方薬です。
症状は、夏場や冷たい物が多くなるとひどくなるように見えました。
夏は外気温が高いために内臓の熱を体表部の皮膚に寄せて、汗として熱を放散しようとする季節です。
一年の中で一番内臓の温度は低い時です。
小青竜湯を飲んで少しい感じがすると言うのは、胃と肺に冷えがあるということです。
小青竜湯は胃内(心下)を温めて水気(すいき)を去り、同時に肺や皮膚を温めて表を整え(解し)ていきます。つまり、呉茱萸湯や小青竜湯では届かない、治ってこない冷えの状態があると言うことです。
息が入ってこない、うまく吸えないということは、酸素を取り込む肺胞がうまく伸びることが出来ていないと言うことです。
伸びる広がると言うのは、陽気の働きです。陽気は温める気でもあります。冷たい物で内臓、特に胃が冷やされ、気を蔵する肺の陽気も減ったのです。酸素は陽です。肺が冷えていることで陽を取り込めなくなってしまっているので、息苦しくうまく息が入らないように感じるのです。肺中冷(はいちゅうれい)、つまり肺が冷えた時の陽気を復する漢方薬、甘草乾姜湯(かんぞうかんきょうとう)が必要です。
また、この方は不安感も出ています。この方の不安・恐怖感は、胃や肺の影響を受けた腎の感情です。
甘草乾姜湯に茯苓(ぶくりょう)と白朮(びゃくじゅつ)を入れると苓姜朮甘湯(りょうきょうじゅつかんとう)になります。
甘草乾姜湯の陽気を復して温める力を、肺中心ではなく腎中心に持って行った漢方薬になるのです。
人間は、腎が冷えることで、腎の恐怖感やパニック、自殺願望などが出てくる場合があります。胃を中心に温め、腎の働きも整えてあげる必要があるのです。
もう一つ、金匱要略(きんきようりゃく)の胸痺(きょうひ)の病に載っている条文が浮かびました。
「胸痺(きょうひ) 心中痞(しんちゅうひ) 留気(りゅうき)結(むす)ぼれて胸にあり 胸満(きょうまん)脇下(きょうか)心(しん)を逆搶(ぎゃくそう)するは・・・ 」
胸痺というのは、胸中の活気(かっき:陽気や熱気)衰え、気血の巡りが悪くなって、痛み痺れる病です。
留気は字のごとく、気が留まってしまうのです。
留まり、結ぼれてしまう、それにより、胸つまり肺や心臓らへんが張ったり、苦しくなったり、痛くなったりするのです。
まさしく、この方の状態を現していると思いました。
人によっては心臓病のような症状を訴える人もいます。ここに載っている処方は、人参湯(にんじんとう)です。
甘草乾姜湯に、白朮と人参を入れた処方です。上記の苓姜朮甘湯の茯苓を人参に変えた処方とも表現できます。
上記の肺中冷の甘草乾姜湯の働く場所を、胃にグッと寄せた処方とも表現できます。
病の本は、冷えた物の取り過ぎによる胃の冷えです。そこからの、肺、腎への影響による、呼吸、不安感と捉え、人参湯3日分差し上げました。
1包服用して、その日ぐっすり眠れて楽なことが実感でき、翌日2包服用し、不安感も呼吸も楽になり、1週間以上経ちましたが、症状も無くなり、落ち着いているとご報告を受けました。
漢方薬は本当に体の治す力を助けてくれますね♪
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50代女性のご相談をご紹介させていただきます。
「病院でカロナール(アセトアミノフェン)をもらっているが服用しても頭痛が治まらないので、何か一緒に飲めるものはありますか?ロキソニンがいいですか?」とのご相談でした。
カロナールを服用すると数時間ほんの少しは軽減はするものの、痛みは楽にならず、いつものように痛みは止まらない。
頭痛をよく経験される方には、いつもは効いている痛み止めでも、効かないときがあることはご経験があるのではないでしょうか。
一般的に服用すれば痛みを感じにくいように数時間抑えていくように考えて作られているものが「頭痛薬・痛み止め」ですから、ロキソニンでも、カロナールでも種類の違いはあれども大きく見れば同じ分類です。いつも効くはずであるカロナールが効いてこないということなので、ロキソニンにされてもこの方が望まれている痛みの軽減・消失効果は期待できないとお伝えいたしました。
やはり原因と状態が大切です。
少しお聞きすると、天気の悪い日や気圧が下がることでよく頭痛するということで、湿気が体内にありそうです。また、やせ形でクーラーなどで皮膚表面・体表面の冷え、夏から少し冷たい飲みが続き胃も冷やしている状態がありました。
食欲は昨日まではあったが、今日からは食欲は落ち、少し吐き気がすると言われておられました。
頭痛の場所はこめかみ近辺です。
こめかみは一般的には神庭(しんてい)と言われる胃の状態が現れやすい場所です。
吐き気があり頭痛があり、胃や肺が冷えていれば、呉茱萸湯(ごしゅゆとう)で温めてよくなる方も多いのですが、この方の場合は皮膚の冷え、風があたる体表部の原因もありました。湿気もあります。便の状態は便秘でも下痢でもありませんので、傷寒論・金匱要略(しょうかんろん・きんきようりゃく)の教科書通りで見れば「桂枝附子湯(けいしぶしとう)」が良さそうに感じました。
肩こりがあること、また病の位置が少し内の方にもあり、桂枝湯をベースに少し加減した「桂枝加附子湯(けいしかぶしとう)」を5日分お出しいたしました。
数日後店頭に来られ「飲んだらすぐに効いて楽になりました!」と喜びのご報告を受けました。
バッチリでした♪(^^)v
桂枝加附子湯によって冷えていたところが温められ、停滞していた水・湿が少しとれたことで、めぐりがよくなり頭痛が良くなったのだと思います。
薬にはその薬の作用・働き方があります。なぜ効かないかをきちんと考え、効くように導いてあげることがやはり大切ですね♪
何かお困りのご相談がございましたら、お気軽にツルガ薬局 松原店までご相談下さいませ。
今週に入って、朝起きてから耳がこもっているような感じになり、両耳とも音が聞こえにくい、とご相談に来られた41歳の男性の症例をご紹介致します。
問診を致しますと、
こういう症状になるのは初めてで、朝からずっと症状があり良くなっていない、朝方トイレに起きた時から症状が起き始めた、それ以外の症状は無し、原因が何かということが非常に大切ですからご本人さんにお聞きしていくと、思い当たることと言えば最近寝る時間が遅くなったことと、気温が少し下がって夜中から朝方のクーラーで冷えたのかもしれない、という事だけでした。特に今朝の症状が出る前にはクーラーが寒く感じたということから、また冷たい物も取っていたということで風邪のような状態での耳のこもりや詰りとして捉え、皮膚と胃を温める漢方薬をお渡しさせて頂きました。
2日後、症状の改善が見られないとのことで、再度ご来店。
病の原因を考えるに、最近まだ日中は気温は高いですが朝晩と少し冷える時も出てきましたし、暦的には秋に入り皮膚の守りにも無理が出やすい時に夏と同じクーラーを夜中付けて、また冷たい物も取って胃も冷やしている・・・外からのクーラーの「風」の影響と、寝不足と冷たい飲み物がきっかけにはなっているものの、夏からの冷やしている習慣から生じた「湿」の影響がありそうです。
ふと思い出せば、この方は数年前に膝が痛くなって走れなくなった時に湿気取の漢方薬で治ったことがありました。
風湿(ふうしゅう:風の影響と体内の湿気の影響から起こる症状)の病と捉え、湿気取りの漢方薬を3日分処方致しました。
翌日にご来店され、1包で良くなったとご報告を頂きました!
病の原因が漢方を出すうえでは非常に重要だと再認識できた一例でした(。・・。)♪
もし何かお困りの症状がございましたら、ツルガ薬局までお気軽にご相談下さいませ。
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5月4日まで春の土用でしたが、2021年5月5日は立夏となり、ここから暦的には夏になります。
夏は、「心(しん)が旺(おう)する期節」です。
ここでいう心とは、心臓や血管・血液、循環器系、血圧、脈、舌や小腸、精神である神、熱、汗などを総称して表現しております。
簡単に言うと、夏は心臓や脈、血管・循環器系が頑張っている期節なので、無理をしないで下さいということになります。
また夏は、バランス的に金運と呼ばれる肺などの呼吸器系、大腸、皮膚や鼻の働きは抑えつけられやすくなる期節になります。ここの働きが弱い方や持病をお持ちの方は特に注意が必要です。
今年は、水運不及の年です。
その関係により、「心」が例年よりもオーバーワーク気味になっております。
夏はここの働きをさらに高めていくように体が働きますので、心臓や脈拍、血圧などの循環器系やのぼせ等の熱感症状は感じやすいかもしれません。
五行(ごぎょう)の関係性からみると、夏の時期は新型コロナウイルス感染症の広がり自体は、他の季節に比べて抑えやすい期節であると言えます。しかし、肺や呼吸器系の働きが低下しやすい時でもあり、心臓や循環器系が力を持って頑張る期節に当たることから、これらに持病を持つ方には負担がかかりやすい時でもあります。つまり重症化しやすいとも言えます。体調管理と感染予防には気をつけましょう。
5月に入り暖かくなってきましたが、冷たい飲食物などで胃を冷やすと、血液が弱り、最終的には心臓や循環器系に無理がかかります。また、皮膚や肺も冷えて弱ってくるので、風邪や新型コロナウイルスなどの感染症にかかってしまうリスクが高まる恐れがあります。アイスや冷蔵庫の中の冷たい物の取り過ぎには十分に注意して下さい(/ω\)
その人に合った夏場の養生法や、食事のバランス、食材がありますので、ご興味のある方はお気軽にツルガ薬局 松原店までご来店くださいませ。
明けましておめでとうございます。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。
さて、本日からお店を開けさせて頂いております。
開店してから1時間ほど経ちますが、この1時間の間にもう3人ものお客様から共通するご相談をお受け致しました。
共通することとは…、内熱からくる症状であるということです。
冬の時期は外が寒いですから体温が奪われないように、体は熱が少しでも逃げていかないように内に貯め込もうとします。
つまり同じ飲食や生活をしていても熱がこもった症状が出やすくなるということになります。
熱がこもっている症状とは、
例えば
口で現れれば口内炎や口角炎、歯茎の腫れ
唇ならパサつきや荒れ・乾燥、
鼻なら鼻茸(はなたけ:鼻の中の出来物)、
頭皮や皮膚では皮膚炎やかゆみ、出来物・腫れ物、
目ならものもらい、
胃ならむかつき・胃もたれ・胃痛など、
肛門なら痔…
などの症状を言います。
年末年始はどうしても熱がこもりやすい食べ物も多くなります。
例えば、おもちなどはその代表になります。
あられやせんべい、甘辛い味の濃い食べ物、おせち、チョコやナッツ系も食べる人が多いのではないでしょうか。ここにジュースやお酒、お菓子などが重なると、症状は出やすくなります。
逆にこもりやすい内熱を冷ましてくれる食材、緑のお野菜や海藻類、キノコ類、酢の物などはどうしても少なくなってしまうのではないでしょうか。
毎年年明けに上記の症状などが出てこられる方は、冬の体は熱がこもりやすいことを知って頂き、食生活に注意をして頂けると治りやすくなります。
つらい症状でお困りの方は、ツルガ薬局までお気軽にご相談下さいませ(/ω\)
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40代女性の肩から腕にかけての痛みのご相談です。
原因をお聞きすると、2週間くらい前に母親の入浴の介助をしているときに、滑ってしまい、自分でもどうなったか分からない程の転倒をしてしまった。
どこをぶつけたのかも分からないが、肩から腕にかけて痛み(手の少陰心経 極泉 近辺の痛み)があって、時間が経っても良くなってくる気配がない、とのことでした。腕を上げるのは大丈夫だが、下げるのが痛い、猫背にする姿勢だと痛みを感じる、とのことでした。
転んで打ってからは薬局で購入した桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)をずっと服用していたとのことでした。
桂枝茯苓丸は、一般的に瘀血(おけつ)を取ります。
打撲や骨折などで内出血した箇所には、壊れて濁った正常に働けない血液が溜まりやすくなります。
これが瘀血です。瘀血があると怪我の治りも悪くなりますし、皮膚や細胞の入れ替えもスムーズにできません。
いつまでたっても治ってこない、例えば冷えたら古傷がいつまでも痛む人も瘀血が原因の場合があるのです。
ですから、この人が桂枝茯苓丸を2週間ほど服用されていたことは適切な処方だと私は感じました。
ただ、こういう人の場合、桂枝茯苓丸を2週間も服用すれば、普通は徐々に回復に向かっていくケースがほとんどですから、この痛みに関しては桂枝茯苓丸では取れない、他の原因ということになります。
滑って転んで少しの間意識が飛ぶくらい激しい転倒だったようなので、経絡や神経、毛細血管などへの衝撃が強く細かい傷が沢山出来てしまい、なかなか回復できていないと考え、「金瘡(きんそう)の特効薬」とされる漢方薬を3回分と、筋肉の炎症を取り気血の巡りを良くして回復を早める手助けをする漢方薬3日分を処方致しました。
翌日ご来店
「金瘡の漢方薬 1回服用しただけで、痛みがかなり軽減されました。昨日と比べ今日は症状が半分くらいになりました。」
と喜びのご報告を頂きました。
漢方薬1つ1つには、それぞれの持つ特徴、働きがあります。
きちんと理解して使い分けること、大切ですね。改めて勉強になりました(-ω-)/
もし何かお困りの症状がございましたら、ツルガ薬局までお気軽にどうぞ(/ω\)
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2020年4月15日 70代女性のご相談です。
心臓の辺りがキュンとすることが不安。これを治したい、とご来店。
症状をお聞きしていくと、
1〜2週間前から心臓の辺りがキュンとする
症状は決まった時に出るわけではなく急に起こる
症状は起きてもすぐ治まる
鼻水(透明)出る時あり
毎年春先に上あご当たりがイガイガすることあり
ストレスあり
のどにチクッと何かが出ている感じあり
意識して水分は取るようにしている(喉の渇きがある訳ではない)
飲食物はまず胃に入り温められ消化されます。人はストレスが加わると、胃の働きが低下します。普段と変わらない水分量であっても、この方はのどの渇きを感じる前に意識的に水分を取っていますから、体からみると水分量は過剰になってしまい、ストレスにより働きが低下した分、処理が追いつかなくなります。これが鼻水として出ています。胃でさばききれなかった水分が肺に上がり鼻から水を抜いているのです。胃に滞った水が停滞することで、胃は冷えます。冷えれば消化管は縮みます。胃に通じる食道も縮むことで、気の巡りも滞り、のどに違和感を感じやすくなります。人の気の流れは、胃から心臓にも流れております。胃の働きが低下し、こちらの気の流れも滞ることにより、心臓の周辺にも症状を感じやすくなります。
胃に停滞した水分を温めながらさばきやすく手助けし、のどや心臓、お腹にかけての気の巡りを良くしていく漢方薬を1週間分処方
させて頂きました。
3日後にご来店され、「漢方薬を服用してから、朝起きた時に気分が下がっていたのが楽になり、心臓の症状も無くなり、鼻も出なくなり、気持ちが楽です。」とご報告頂きました。
もし何かお困りの症状がございましたら、ツルガ薬局までお気軽にどうぞ(/ω\)
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今回は症例をご紹介致します。
2020年(金運太過:きんうんたいか)4月上旬 60代女性からのご相談です。
主訴:「2日前から急に、背中がグッと詰まるように痛くなり、食事の時や体の態勢を変える時に痛みが出てつらい。
今日で3日目だがほとんど変わっていないので、心臓病なのか、大きい病気なのか、すごく不安です・・・」
詳しくお聞きしていくと、
●2日前の昼過ぎから急に背中の痛みが出た(ちょうど胃の後ろ、肩甲骨近辺が痛い)
●鎖骨近辺(両方)も痛い
●鎖骨から首の辺りも詰まってくる
●体の姿勢を変えると痛みが出る、深呼吸しても痛い(じっとしていると痛くない)
●1日何回も起こる、痛みは一瞬ですぐ治まる
●食事も食べ物がのどを通る時、飲み込むと痛みが出るので、食欲自体は落ちていないが食べる量は減っている
●自分で思い当たること、原因としては、ストレスかなぁ・・・とのこと
●冷飲食や体を冷やしたりはしてない
●脇の下までビーンと張るような症状もあり
●他の薬局で柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)、柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう)を勧められ服用するも、肩こりは少し楽になるがこの症状は変わらず
お話ししている中で、「ゲップが上がってくることによって食道が広げられ、食道の裏側(背中側)の血管神経が押されて痛みが出る感じ」とその人自身が表現されたことがきっかけで、ゲップがよく出ていて、これが痛みの刺激になっていることが分かりました。
さて状態・原因を考えてみると、この時期は春の影響で肝の働きが高まり、胃腸が抑えられやすくなっています。かつ、ストレスにより心気(しんき:心臓を正常に働かせるための気)が不足してしまい、その結果、胃と小腸の働きが弱まります。普段とはそんなに変わらない飲食物であっても、弱まっていますから胃での処理が追いつかず、脇下に水気(すいき:冷えや弱りによって停滞した水)がたまり、気が停滞・充満してゲップが出るのです。食道は水や穀物・食べ物の通り道であり、その中心の働きは胃に基づきます。胃が弱れば食道も弱りますから、通りも悪くなりますし、陽気も衰えて狭くなります。そこをゲップで刺激されれば痛みを感じるのではないかと考えられます。
ストレスからくる胃や小腸の弱りからくるゲップを治し、心気不足を補う漢方薬を3日分処方致しました。
翌日ご来店され、「昨日、帰って1包服用しただけで痛みが楽になり、もう一度寝る前に服用しました。今は95%くらい治りました。ありがとうございました!」と喜びのご報告を頂きました。
たった1日でゲップもほとんど出なくなったとのことでした。
もし何かお困りの症状がございましたら、ツルガ薬局までお気軽にどうぞ(/ω\)
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2019年9月19日 老人ホームの施設の看護師さんからお電話でご相談がありました。
内容は、入所されている67歳のある患者さんが、昨夜からしゃっくりがひどくて夜も眠れないほど激しいため、担当医に相談するも「眠れない程のしゃっくりを止める薬はない」と言って何も出してくれないらしく、看護している者からしても何とかしてあげたいので、何かお薬はありませんか?とのことでした。
ここで何度も書いておりますが、漢方薬というのは症状が同じであっても、その人の原因と体質と状態によって処方が変わります。漢方薬に限ったことではありませんが、状態を捉えてこそ適切なお薬を出すことが出来ます。更にご本人様とは一度もお会いしたことがありません。
しかし、大変お世話になっている施設の方ですし、何よりも患者さんが辛そうで何とかしてあげたいというお気持ちは分かりましたので、私でできることがあればと思い、お薬をお出しすることに決めました。
11種類の薬(血圧薬、糖尿病薬、血栓予防薬、胃腸薬、睡眠薬、抗うつ薬)を服用されていることを把握した上で、必要最小限で問診させて頂きました。
・下痢 →なし
・手足の冷え →今は微熱37℃ちょっとあるので温かい(普段は冷たくなりやすいのかも…)
・食欲 →少ないわけではない
・みぞおちの痞え →本人でないため分からず
・トイレの回数 → 本人でないため分からず
さて、しゃっくりの原因は色々とありますが、多いのは胃の冷えです。冷えがあるなら、もちろん熱からもしゃっくりは出ます。胃熱からのしゃっくりもあれば、横隔膜近辺の気のこもりからくるしゃっくりもあります(傷寒論・金匱要略に記載されております)。
この人の原因・状態を考えていくと、この時期まだ日中は暑い時もありますが、朝晩と肌寒く感じる日も増えてきました。人間は外気の冷えを皮膚で感じ、皮膚の守りが弱いと風邪をひきます。皮膚が冷えそうになると、足りなくなってくる熱を胃の陽気(熱エネルギー)から補います。その結果、この方の場合は皮膚が冷えて風邪のように微熱が出て、胃も弱り冷えてしゃっくりが出てきたのではないか、と考えました。冷やすことや、下すことは攻めることになりますが、温めたり補うことは守ることにもなります。まずは守ってあげることが大切ですから、皮膚と胃を温める漢方薬を3日分処方させて頂きました。
9月22日 他の入所者さんのお薬を配達にお伺いした時に、
「翌日に38〜39℃と熱が高くなりましたが、しゃっくりもすぐ止まり、もう熱も平熱に治まりました。ありがとうございました。」
と喜びの御報告を頂けました。
漢方薬を服用して翌日に熱が高まったのは、免疫力を高めて早く治そうとする生体防御反応です。
ご年配の方だけではなく、お子様にもこういった胃の弱りからくる熱、風邪が多いため、この漢方薬をよく使います。
漢方薬は、とにかくその人の自然治癒力、自分で治していく力がきちんと働けるようにサポートしていくお薬ですね、今回の件で改めて再確認できました。
もし何かお困りの症状がございましたら、ツルガ薬局までお気軽にどうぞ(/ω\)
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初めてのお客様からは、「漢方薬って長く飲まないと効かないんですよね?」と店頭でよく尋ねられます。
結論を申しますと、漢方薬は1回飲めば1回分の効果は出ます。
病が浅い場合は、すぐ治ります。
病が深い場合、長年の原因がある場合は、その人自身が治していきますからそれなりに必要な時間はかかるでしょうが、効果的には実感を別にすれば、すぐに効いているのです。本当に実感しやすい人は1回、1日でも分かります。
最近の症例を一つご紹介させて頂きます。
42歳女性(8歳の子供1人) 痩せ型
2019年(土運不及)9月9日御来店
<主訴>
今年の8月終わりから疲れがどっと出て体調すぐれない(3年くらい前から少し買物してもしんどく休みたくなるほど)。不安感、動悸あり(体つかれると特に不安感動悸感じる)、恐怖感から体こわばることもあり。胸がざわざわして落ち着かない(緊張した状態、生理前に多い、自分では更年期症状かと思っている)。
<その他の情報>
3年前の同時期にも初めてこのような症状になり数ヶ月悩まされた。(この時は徐々に回復できた)
5年前に乳がんになる、今年の8月の初めにもしこり(良性)が見つかり手術
<状態>
血圧(100〜90/60)
痩せ型
首筋のこり(クーラーなど風が当たると特に)、食欲不振(疲れ感じると全く食べたくない)、腰痛、冷え性(体冷やさないように注意されている)
生理周期:23〜24日 3日目から出血量少量で4〜5日で終わる感じ(昔は量も多く1週間ほどあった)
緊張すると脇汗、手汗あり
よく眠れる、頭汗なし、口渇なし、口乾なし
<考察>
食事のバランスや水分摂取もそこまで悪くなく、冷えに対する養生もきっちりされている方でした。ただ血虚(けっきょ:血の弱り)があり、ご自身でも出産後からの体力低下も感じるようでした。生理周期の短さ、出血量、そして疲れ方も、買い物でも休みたくなるほどですから、血虚を通り越して亡血(ぼうけつ:血が亡くなるほど弱った状態)までいっていると感じました。人は大病後やひどく疲れることで、体の土台である脾胃(ひい:すい臓・胃を中心とする消化器系)が弱ります。この脾胃を養っているのは血と陽気(熱エネルギー)です。この方は疲れると、動悸やざわざわ感、精神的にも緊張や不安を感じやすくなっております。血からくる精神不安です。血が弱く、体の土台まで弱っていて、日常生活の行動でさえも負担になるほどの状態ですから、亡血を補う漢方薬(血に陽気を入れる)2週間分とコンクレバン3本(1回30mLを1日2回)をお勧め致しました。
<経過>
2019年9月24日御来店
体の疲れ、だるさ、大変楽になり、動けるようになった
首筋のコリも楽になり、動悸・不安感も減った
食事量も以前は少量しか食べられなかったが、食べられる量が増えてきた
(→これは血の陽気が胃に回る、つまり胃の陽気が増えたためであろうと考えられます)
非常に体調が良いので同じものを1カ月分下さい、と言って下さりました。
今ちょうど生理前(明日くらい始まるくらい)でザワザワ感は今日感じる、とのことでしたので、生理前は子宮に血が集まりますか、子宮は血室(けっしつ:血が集まる部屋)であり、血虚や亡血がある方でも、血の熱の寄りが影響して様々な症状が出ます。ですので、漢方薬は少し加減させて頂き、生理に絡む精神不安症状や胸のザワザワ感が楽になるような漢方薬を追加させて頂きました。
漢方薬 1ヶ月分、コンクレバン 3本をご購入いただきました。 現在も続服中です。
この方は2週間でも今までの体の状態との違いをはっきり感じていらっしゃいます。漢方薬の効き目は、とても自然的で無理やりなことはせず、その人自身が治していく中で早く治りやすいように自然治癒力を手助けしてくれる役割があります。
もしなかなか治ってこない症状でお困りの方は、ツルガ薬局で一度漢方専門相談をしてみませんか?
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今日は症例をご紹介致します。
2019年(土運不及)6月27日
下唇に水ぶくれの袋が生じて、何か塗り薬が欲しいとご来店された20代男性。
よく日に焼けておられ、体格も良い方です。
ご様子をお聞きすると、昨日から頭痛、熱っぽさがあり、市販のEVEを服用。のど痛と鼻も少し出る。
寒気も少しあり、喉の渇きも確認するとありとのことでした。
最初はヘルペスかと思い、診させて頂いたのですがヘルペスっぽくありません。この水膨れのような腫れは一体なんなのでしょうか。
漢方を勉強されている先生方の中で、ここでピンと来られる人も多いのではないでしょうか。
そうです、肉上粟起(にくじょうぞくき)とか結胸(けっきょう)の原理と同じではないかと私は考えました。
正常な熱の移動が急に冷やされることで、行き場を失った熱と水が出来物のように腫れてくる「肉上粟起」の原理
強い熱の塊を一カ所に留めるために体内で冷やす働きを持つ水が熱の周りを取り囲む「結胸」の原理
ご本人様にも確認したところ、このような状態になる前に、寝不足と疲れ、無理をなさっていたことが分かりました。
外のお仕事で紫外線も当たりよく焼けておられます。焼ければ皮膚や唇は熱を持ちます。冷えた水分もよく飲み体を冷やし、さらに寝不足と疲れにより熱や水の正常なめぐりを低下させ、発散不良にもなります。皮膚や唇の熱を冷ますために体内の水が集まり停滞してしまい水ぶくれが生じたと考えました。熱っぽさ、寒気や鼻の程度、のど痛、口渇、体格や体質などを考慮して漢方薬を2日分処方致しました。内からの原因ですので、塗り薬はいらない事もご説明させて頂きました。
もちろん、回復力と免疫力を高めるためにドリンクの服用と養生法はきちんとお伝えさせて頂きました。
7月17日御来店された時に、6月のご様子をお聞きしたところ、「飲んですぐ効きました!スッーと水膨れが引いてすぐ治りました!」とご報告頂きました。
やはりきちんと養生して頂きながら漢方薬を服用すると、自然治癒力の回復が早いですね♪
良くなられて安心致しました(*ノωノ)
参考)他の記事
「呼吸が入りにくい 」
「越婢加半夏湯(えっぴかはんげとう) 〜 越婢加朮湯(えっぴかじゅつとう)との違い 〜 ?」
「越婢加半夏湯(えっぴかはんげとう) 〜越婢加朮湯(えっぴかじゅつとう)との違い〜 ?」
どんなお悩み、ご相談でもお気軽にツルガ薬局 松原店までどうぞ(/ω\)
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白血病を漢方的に考えるとどうなるのか、数人の方からお問い合わせを頂きましたので、簡単ではありますが書かせて頂きます。
まず血液中の血球成分には、赤血球、白血球、血小板があり、これらは全て造血幹細胞(ぞうけつかんさいぼう)から分化(ぶんか)されて作られます。主に赤血球は酸素の運搬、白血球は免疫、血小板は出血を止める働きを担っています。
白血病は西洋医学的には、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病などの種類はありますが、基本的に未熟で幼若な白血球が異常に増加して、正常な白血球が低下してしまい本来の備わっている免疫機能がきちんと働きにくくなる状態になります。
なぜこのような白血病になるのかは、西洋医学的には原因が分からないとされていますが、漢方的な東洋医学的な考えからみていくとまた違った捉え方が出来ます。
白血病は主に免疫を担う白血球のガンです。正常な力のある白血球が減り、異常な未熟な白血球が増えてしまう状態です。一種の白血球の弱りです。
なぜ白血球が弱るのでしょうか・・・、それは血液自体が弱っているからだと私は思います。
白血球も、赤血球も血小板も、元は1つの細胞(造血幹細胞)です。
人は無理が続く(過労)と、最後には血がやられてしまいます。睡眠不足や、食事の量やバランス、栄養状態、冷えやストレスなど様々な影響が絡み合い、その無理・負担が、最後には血にいくのです。こういうことは漢方の原点の傷寒論(しょうかんろん)や金匱要略(きんきようりゃく)に書いてあります。
血を温めるエネルギー、血を元気にするエネルギー、血が本来の働きを正常に行えるエネルギー、これらのエネルギーである陽気が不足してしまうのです。
血の元になるのは、陽気であり、食事(穀気)です。食事がきちんと体を養えるものでなければ、その負担は必ず自身に返ってきます。そして栄養素を体に入れても陽気がなければ、体に身に付きません、つまり血に反映されないのです。まずは血に陽気を入れてあげることが、体を回復していくための最初にやるべきことになります。
「過ぎれば血にくる」(参考:血の弱りに注意! 〜 ガン・白血病・膠原病・リウマチなど 〜)
睡眠不足、ストレス過多、過労、冷やし過ぎ、偏食(お菓子や間食、期限の長い鮮度の悪い物が多い)・・・
続けば必ず体から悲鳴が出てきます。
大きなゆがみが出る前に、日々の食習慣、生活習慣を見直していけるといいですね。
白血病だけではなく、様々な病でお悩みの方、ツルガ薬局 松原店 田邉宗久までお気軽にご相談下さいませ(/ω\)
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40代の女性の症例です。
急な吐き下しで、もう3日目なのにずっと寝ていて、物もほとんど食べれない状態。
おかゆを二口ほど食べるだけでも吐いてしまう。
旦那さんがご来店され、相談(2019年土運不及 冬の土用中)。
この方は以前から、体調を崩されるとツルガ薬局にご相談下さり漢方薬をその都度お作りしている方ですので、体質は分かります。
もう間違いなく、亡血(ぼうけつ:血の弱りのひどい状態)だと分かりましたので、ここを補う漢方薬をお渡しいたしました。
後日、ご報告頂きましたところ、
「帰宅後漢方薬を1包服用し、おかゆが食べれるようになり、翌日には買い物に出かけるまでに回復しました。もうすっかり良くなり大変助かりました。」
と大変喜んで頂きました。
最近は特に若い女性の方で、血が弱っている人が非常に多く見受けられます。
( 参考:血の弱りに注意! 〜 ガン・白血病・膠原病・リウマチなど 〜 の記事 )
私たちの体は、血から胃気(いき:胃の働きを主る気)ができ、食べた物を消化吸収して血や肉となる体の原料を体内に残せるようになります。それにより陽気も増えていきます。つまり、血の力が失われてきてしまうと、胃の働き、消化する力、吸収する力、陽気を作って体を温め、活発に動かしていく力が弱ってきてしまうのです。
ここまで弱ってしまうと、恐らく病院のお薬や他のお薬では、なかなか良くならないと思います。
血に陽気を入れてあげるようなお薬、やはり漢方薬が一番早く効果が出てくることは間違いないことだと思います。
なかなか良くなってこない症状でお困りの方は、お気軽にツルガ薬局までご相談下さいませ。
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日々、店頭でお客様から教えて頂くことが沢山あります。本当に感謝です。
先日来られた30代女性のお客様。
生理中は出血に伴い頭痛や体調不良を感じるため、いつも当帰(とうき)剤を服用されておられる方です。当帰とは、血を温め補う代表的な生薬です。当帰の入っている漢方処方を「当帰剤(とうきざい)」と呼び、一般的に「血虚(けっきょ:血の弱り)」によく使われます。
昔から血虚の人にはよく当帰剤と言われ、以前までは当帰剤で十分改善できる方が多かったのですが、最近の人は当帰剤では効かない、効きが悪い人が増えてきたように感じます。これは、血虚を通り越して、もっと血の弱った状態、「亡血(ぼうけつ:血が亡くなるほど血が弱りきってしまっている状態)」になっているからです。
上記の30代女性の方も、いつもなら効くはずの当帰剤が今回は効かず、頭(こめかみと頭頂部)と目頭が痛く、横になる時間が多くなっているというご相談でした。2種類ほど他の漢方薬を飲んで頂いても効いてこないので、亡血として捉え、亡血の漢方薬をお出しすると、5分も経たないうちに大変楽になられました。
亡血までいっていると、血虚の当帰剤では効いてきません。
ガン、白血病、膠原病、リウマチなど、亡血の状態が続くと起こりやすくなると考えられます。
知らず知らずのうちに血を弱らせやすい食事や生活習慣になっている人が非常に多くなってきています。
冷蔵庫が普及し冷えた物を取る習慣がつき、便利の反面、加工食品や冷凍食品、日持ちするように様々な添加物が加えられた飲食物、昔の日本食からは程遠い食事の内容、体を養う食事ではなく軽食や間食・パン食など・・・。
日々の食事が非常に大切になります。
不安に思うことがありましたら、お気軽にツルガ薬局までご相談下さいませ。
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さて今回は人間の体内の臓(ぞう)と腑(ふ)の関係を書かせて頂きたいと思います。
臓と腑は、簡単に表現してしまえば、親子関係や表裏の関係と捉えると分かりやすいです。
肝臓と胆のう、心臓と小腸、脾臓(ひぞう:すい臓)と胃、肺臓と大腸、腎臓と膀胱、が親子だと考えて頂ければよろしいかと思います。
人の体は、親である臓が病んでしまうと回復が難しくなるため、親への負担を子に流す関係性が備わっています。
例えば毎日お酒を沢山飲み続けていて肝臓に無理をかけている人は、よく胆汁の流れが滞りやすくなり、胆道系や胆管、胆のうに負担がかかり、胆石などができたりします。ひどいと胆のうを手術で取らなければならなくなる人もいらっしゃいます。このように親である肝臓への負担は、子供である胆のうへ流しているのです。
私が知っているだけでも、お酒が原因で胆のうを手術で取られた方は数人おられます。病院で胆のうを全摘した後、その人が同じような生活習慣を続けていると、必ずと言っていいほど肝臓を病んでしまいます。もう負担を流せる子供(胆のう)がいないためです。ですから、十分注意しなければいけませんし、本来はこういう話を病院や薬局で、お伝えしなければいけないと私は思います。臓が病んでしまうと、病気を治していくということは難しくなります。
他にも肺と大腸の関係性の例をあげると、喫煙している方に大腸がんが多いことはご存知でしょうか。これは肺への負担が大腸に影響を与えたと考えられます。
このように臓と腑は密接に助け合い関連性がありますから、例えば大腸ポリープが検査で見つかった人は、将来肺の呼吸器関連の病気に注意していかなければいけません。便秘や下痢、スッキリ気持ちよく太くて柔らかい良質の便が長い間出ていなければ、大腸や肺に気をつけなければいけません。
膀胱炎や頻尿、尿のトラブル、男性なら前立腺肥大など、膀胱の関連症状は出ていませんか?膝や腰、下半身、骨や歯なども膀胱と同じ状態が出ますから、ここに弱りが出てきている方は、その臓である腎を大切にしていかなければいけません。
胃が調子悪い人は、すい臓に無理がかかっている人が多いです。すい臓は、大酒や大食、タバコやストレスを嫌います。すい臓ガンは発見が難しく、見つかった時には随分進行しているケースが多いと言われています。胃からのSOSのサインが出ているうちに、原因を見つけ早めに改善していきましょう。
渋り腹や、ドロドロした便、痔や、食事の前後の不快感、血圧異常、脈の乱れ、気持ちが落ち着かないなどの精神的症状などの小腸の症状は出ていませんか?小腸に無理がかかってくると、ひいては血液循環や脈に異常が出て心臓に病気が出てきやすくなります。
胆のうや胃、腸、膀胱の悲鳴を見逃さず、きちんと改善して治していく、これが将来命を左右しかねない臓の病(大病)を防ぐためのコツです。体から発せられているSOSサインを見逃さないようにしましょう !
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先程、お客様からアケビを頂きました。
皆さんはアケビ、ご覧になられたことはございますでしょうか?(/ω\)
恥ずかしい話、私個人的には初めて見ました・・・(笑)
(因みに山形県があけびの収穫量がダントツで日本一らしいです。)
漢方では、あけびの蔓(つる)を木通(もくつう)又は通草(つうそう)と言い、当帰四逆湯(とうきしぎゃくとう)や当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)に使われております。
その気味(きみ)は辛平であり、気を通じて血をめぐらし、よく手足を温める働きがあるとされております。
ある先生が言われていた通り、断面をよく見ると小さい穴が沢山開いています。
この穴が気を通じると言われている由縁なのですね♪
大変勉強になりました(-ω-)/
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JUGEMテーマ:健康
先日、50代の女性の方が、「1ヶ月ほど前からほぼ毎日、右目のまぶたの上がピクピク動く。それと連動して最近は目の奥も痛くなる。病院へ行って検査しても異常がないと言われるのですが、何かありませんか?」とご来店頂きました。
問診していきますと、
・1か月ほど前(2018年6月中旬頃)から、この症状が起こりだした
・ご自身で思い当たることは無し
・症状が起こりやすい時間帯や環境・生活など(クーラーの風、天気、梅雨、湿気)での変化なし
・口渇なし
・水分の取りすぎもなし
・汗はかきやすい方(顔と首)だが、今は汗かかないようにしている(ネチョッとするのが嫌なので)。お風呂も湯船には浸かっているが、37℃くらいで汗かかないようにしている。汗をかくことによって調子が悪くなるという事はない
・便は普通(固くなるよりは緩くなる体質)
・小便 1日8回ほど
・クーラーは28℃くらい(→でも朝方は寒く感じる)
・めまい、耳鳴り、頭痛、頭冒(ずぼう)、胃の痞え、腹痛、腰痛、動悸、息切れなどの他の症状なし
・強いて言えば、血圧の薬服用していること、最近足がむくむ(夕方押すと少しへこむくらい)、膝(左)が正座する時等少しこわばる感じ(これもここ1ヶ月くらい前から)があるくらい
・4年程前(2〜3月頃)にもなったことあり(この時も長かった1ヶ月ほどかかった、知らない間に治まっていた)。その前も何回か繰り返しなっているようだが、今回のようにひどいのは初めて。
・嗜好品としては、ここ2ヶ月ほど前から貰い物のペットボトルのアイスコーヒーを毎日頑張って飲んでいる。アイスも食べる、クルミやアーモンドも(12個ほど/日)、あられ小さいのを3個、パンも。毎日20時頃バナナ1本、牛乳、果物や野菜をミキサーに入れて飲んでいる。
さて、病院で検査しても異常が見つからず、ほぼ毎日症状が起こり目の奥まで痛くなってきておられます。この原因は何なのでしょうか。一見すると水が多そうには見えませんが、私は皮膚表面に水の停滞があり、これにより症状が起こっていると考えました。
理由はいくつかあります。
まず、1ヶ月ほど前から症状が起こっています。ご本人様は思い当たることはないということですが、1ヶ月ほど前は夏にあたります。夏は心(しん)が旺(おう)する期節であり、かつ肺や皮膚や大腸、鼻の働きが抑えられやすい期節になります。心が旺するとは、心臓や血管、脈を始め循環器系が力を持ち、熱がこもりやすい状態になっていることをいいます。ここに、あられやパンなどを取ることでさらに血に熱を持ちやすくなります。この血の熱は、血の液・心の液として汗で発散していけばいいのですが、この方の場合汗をあえてかかないようにしておられます。つまり、血の熱が十分に取れないことになります。
熱を冷ますには、体内では水がその冷やす作用を担っています。血の熱が体内の水を引っ張り、その水分が関節や皮膚に流れます。「湿(重い水をイメージしてもらえば結構です)は関節に流る」と金匱要略(きんきようりゃく)にもちゃんと書かれております。これにより、膝の痛みが出ていると考えられます。
「命にかかわる危険な暑さ」と連日ニュースで言われていますから、職場でも家でもクーラーは欠かせない環境になっております。クーラーで皮膚を冷やすことで、汗として皮膚から発散されるべき水分と血の熱は、外へ発しにくくなり、皮膚近辺に水分が停滞しやすくなります。この停滞した水分を、体は何とかして動かして治したいですから、無意識の筋肉運動を起こし、その時に発生する熱エネルギーでこの停滞した冷えた水を温めてさばきやすくしようとします。これがまぶたのピクピクの病理です。
この方は細身の女性で、体の温める力はそれほど強くはありません。つまり皮膚のクーラーに抵抗する力、胃で飲食物を温めていく力も、それ相応になります。ここに、アイスコーヒーや、この酷暑によるクーラーの影響、汗のかき方や入浴などの生活習慣が加わり、特別メチャクチャなことをしていない、いつもと同じ日常生活の範囲内でこの状態が作られてきてしまったのです。
このような皮膚近辺の水、ちょうど皮膚の下の肉の辺りに滞ってしまった水をさばく時には、茯苓(ぶくりょう)という生薬が良く効きます。この方の皮膚の力と、クーラーなどの生活環境を考慮すると、皮膚を温めて停滞した水がさばきやすいように、気の発散と巡りを良くしていく桂枝(けいし)も必要です。そして茯苓と桂枝の働きを助けるために、血に入り皮膚を温めながら水をさばき、かつ筋骨や関節の痛みを和らげていく生薬や、とどまったものを和らげ症状を緩和し正常に戻していく生薬など、生薬1つ1つの働きから処方を選びました。養生法の説明と考えた漢方薬を1週間分差し上げました。
4日後にお電話を頂きました。
「木曜日の夜から漢方薬を飲み始めて、土曜日の午前中には、ピクピクの症状が出る間隔が伸びて、程度も軽くなっていることに気付き、翌日の日曜日は症状が出ませんでした。今日も出ていませんが、まだ飲んだ方がよろしいですか?」
バッチリ合っていることが分かりましたので、差し上げた1週間分は飲み切っていただけるようにお伝え致しました。
生薬の1つ1つが持つ気味(きみ:気と味)と薬能(やくのう:効能)から導き出していくことも大切ですね♪
改めて勉強になりました(-ω-)/
因みに茯苓と桂枝が入った処方を参考までにいくつかご紹介させて頂きます。
茯苓甘草湯(ぶくりょうかんぞうとう)、黒散(こくさん)、八味丸(はちみがん)、柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)、苓桂甘棗湯(りょうけいかんそうとう)、苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)、苓桂味甘湯(りょうけいみかんとう)、桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)、五苓散(ごれいさん)、茯苓沢瀉湯(ぶくりょうたくしゃとう)、防已茯苓湯(ぼういぶくりょうとう)・・・等々、沢山あります。ご興味のある方は、調べてみると「気の衝逆(しょうぎゃく)」、「水の衝逆」がその処方に隠されていることが発見できてきて、新たな発見があるかもしれません(/ω\)
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JUGEMテーマ:健康
2018年7月14日
50代女性 右腕の前側の付け根付近が1週間ほど前から痛い。一向に良くならず、ご来店され相談。
思い当たることを聞くと、犬の散歩をしていて右腕でリード(手綱)を引くので、これくらいしか思い当たることがない。でも犬の散歩は今までも毎日行っていたので、自分でもなぜ痛いのかが分からないとのことでした。
それ以外の気になる症状も無く(肩こりなども何もなし)、今までこのような症状になったことはないと言われます。
クーラーの風や冷たい飲食物などで体を冷やしていることもなく、楽な時や辛い時などの症状の変化もありませんでした。
痛む場所は、中府(ちゅうふ)という太陰肺経(たいいんはいけい)の経穴近辺でした。
この夏の時期は心(しん)が力を持ち頑張っていますから、バランス的に肺が抑えられやすくなっています。
かつ今年は火運太過(かうんたいか)の年ですから、より一層肺の働きは弱りやすくなります。
肺が弱れば、肺経にその影響が出ますし、冷やし過ぎていないとはいえ、この時期はクーラーや水分補給などで肺も大なり小なり冷えやしています。
手足の冷え、舌(少し苔あり)だけ確認して、陰陽調節湯(いんようちょうせつとう)を処方致しました。
7月17日
漢方薬を服用すると、体がポッーと温かくなる感じがして調子がいいです、とのこと。
痛みも2日間で半分ほどになりました、とご報告頂きました。
その季節に伴う体の状態と経絡(けいらく)と合わせみていく大切さ、改めて勉強になりました(-ω-)/
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JUGEMテーマ:健康
今朝、あまりにも劇的に痔が良くなった例がありましたので、ご紹介させて頂きます。
2018年6月25日(月曜日)
30代後半の女性 久しぶりに痔が出来てしまい、漢方薬ありませんか、とご来店。
先週の土曜日(2018年6月23日)くらいから出来始め、今日で3日目に当たる。
イボ痔で、下着に触れたり座ったりすると痛い。出血などは無し。
さて、もしここで病院へ行き、漢方薬を出して下さいと言えば、すぐ処方して下さるお医者さんがほとんではないでしょうか。
赤く腫れて痛みがある、痔、ということから枳実芍薬散(きじつしゃくやくさん)や排膿散(はいのうさん)、はたまた桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)や乙字湯(おつじとう)など病名や症状で選んですぐ出してくれるはずです。
これで治ればいいのですが、本来は病名や症状が同じでも、人間顔が違うように原因や体質・状態は違い千差万別です。何より漢方薬は、その人自身が治していきやすいように整えていくお薬ですから、原因や状態が違えばまず効きませんし、治りません。
病は原因が大切です。原因をお尋ねすると、自分では分からないと言われます。
(これもよくありますね、ご自身ではなぜなったのか分からない・・・、そりゃそうですよね、分かっていれば気をつけますもんね・・・。)
さて、ここからが私たち漢方専門相談の腕の見せ所です。
(今回はちょうど2日前のことで、問診時間も2〜3分で短く状態を捉えてお薬をお出しした方なので、記憶が鮮明ですから、どのように問診していったのかも書かせて頂きたいと思います。)
冷たい物や甘い物、もち米など、食事の面をお聞きいたしました。が、特に悪い所は見当たりません。
睡眠不足、ストレス、体の疲れなど、こちらも自覚症状も生活習慣も特別気になるところはございませんでした。
女性は必ず生理を聞かないといけませんので、お聞きすると、今は生理後1週間くらい経った頃とのことでした。
生理の時によく痔になるのかをお尋ねすると、そんなことはなく最近は全くなっていなかった、とのことでした。
では以前に痔になった時は何が原因で、どういう時になったのかをお尋ねすると、スノーボードに行く冬によくなっていた、とのことでした。10年ほど前には冬はスノーボードをしていたので、シーズン中はずっと痔になっていたが、もうスノーボードをしなくなり、冬でも大丈夫とのこと(その当時は、ほぼ毎週末ボードには行っていた)。
一番最近はいつ痔になったかを聞くと、2年ほど前に旅行に行ったときになりました、それ以来です、とのこと。
便の状態は下痢も便秘も無し、痔以外の症状は特段辛い症状は無し。
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ここまでの問診で、ほぼ原因も予測でき、飲んで頂きたい漢方薬も決まりました。
病の原因は労(疲れ)と血虚(けっきょ:血の弱り)からくる血の滞りと捉えました。
生理後1週間ですから、生理の出血を経ると、どなたでも大なり小なり血が弱ります。肝は血を蔵するところです。つまり貯蔵するところですから、肝臓も弱ります。
私自身も若い頃はスノーボードをよくしておりましたのでよく分かりますが、スノーボードは大変体が疲れます。しかも毎週、シーズン中はよく行っていたとのことですから、必ず肝の弱りがあります(体を温めるために熱を作ったり、肉体疲労を取っていく中心の臓器は肝臓です)。
2年前の旅行の時に痔になったのは、恐らく旅行疲れではないかと考えました。
私たちは口から入れた食べ物を消化し、主に腸から吸収します。腸から吸収された栄養素は門脈(もんみゃく)と言われる肝臓へとつながる血管を通して、重力に逆らい持ち上げながら腸から上に位置する肝臓へと吸い上げられます。そして体に必要なものに合成されて、全身へと運ばれます。
血管には大きく分けて動脈と静脈があり、動脈で栄養や酸素を送ったあとは老廃物や二酸化炭素を受取り静脈を通して心臓へと送り戻しております。下から上に重力に逆らいながら老廃物を持ち上げ戻す静脈には、逆流防止のために弁というものが血管内についているのですが、この門脈には逆流防止のための弁が存在しません。つまり、腸から肝臓への血流は、肝臓の上に引っ張り上げる力、肝臓自身の力に直結しています。
肝が疲れれば、上に正常に血液を吸い上げたり戻したりすることが出来ずに、腸付近、肛門付近に滞ります。その結果がポコッとできてしまったイボ痔なのです。
ですから、この人自身は無理をして過労気味とか、睡眠不足、ストレスで肝臓を弱らせていなくても、生理後は血が弱りますから、普段の食事や生活習慣が変わらないものであっても、血を貯めこむ、血の状態が反映される肝臓(血海:けっかいとも表現されます)が弱り、血が滞って痔になってしまったのです。
疲れを取り、肛門に滞った血液の渋滞を取り、肝臓を元気にする処方が必要ということになります。
ここを補う漢方薬を1週間分お出しさせて頂きました。
痛みもひどくて擦れるだけでも痛いというので、塗り薬もご購入されました。
2018年6月27日(水曜日) 朝ご来店
「大変良くなりました。もう治りました!」とご来店。
私自身、えっ!と思い、詳しく経過をお聞きすると、25日の来店後にすぐ1包服用し、夕方に1包、寝る前に1包服用、塗り薬は寝る前に1度だけ塗りました。寝る前には、もうすでに小さくなって、症状も軽快していたそうです。翌日26日は漢方薬を1日3包服用し、塗り薬は一度も塗らなかった(症状が軽快して塗る程の状態ではなかったため)とのことでした。
小さくなったってことですよね?と聞き返すと、「いえ、治りました!全く何もない状態になりました!私も1ヶ月くらい長引くかと思っていました(笑)」と改めて軽快ではなく、治っていることを教えて頂けました。
「その効神の如し」ですね。
病の原因・状態を捉えることの大切さと、漢方薬はその人の「自然治癒力が最大限発揮できるように整え手助けしていく薬」であることの再認識、改めて勉強になりました(-ω-)/
漢方専門相談はお気軽にツルガ薬局 松原店(0770-22-8515)までお気軽にどうぞ♪
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30代の妊婦さんの喜びの声を頂きましたので、ご紹介させて頂きます。
妊娠4ヶ月頃に小指にできたイボが、漢方薬を飲むようになり徐々に小さくなり、取れてキレイになったと喜びのご報告を頂きました。漢方薬を飲むようになってすぐにイボが小さくなった気がしたので、すぐに写真に撮ってくれていたみたいで、その写真を掲載させて頂きます。
?右手の小指 内側 第二関節付近に妊娠中イボが出来た
?周囲が盛り上がってきて、イボが剥がれ落ちそうになってくる
?イボの表面が取れて、中身が出てきたところ
?イボも取れてキレイになりました♪
この方が飲まれていた処方は・・・・、血を補い肺と心と肝を中心に働いていく漢方薬です。
以前の症例にも書いておりますが、妊娠6ヶ月の時に腕が痺れてきて、そけい部の辺りのしこり、頭痛、肩こりでこの漢方薬を服用して頂いたときに、すぐ症状は治りましたがその後に、「この漢方薬を飲んでからイボが小さくなったような感じがするのですが、続けた方が良いですか?」と聞かれ、しばらく続けて頂きました。
何度も申し上げておりますが、「どんな症状でも原因が大切」です。
この方のイボのできた場所は少陰心経(しょういんしんけい)です。心(しん)は血をめぐらす働きがあり、血の状態が反映される場所です。2017年は木運不及(もくうんふきゅう)ですから1年を通して肝の力が弱っています。肝は血を貯蔵するところです。つまり肝の影響からの血の弱りが起こりやすい年なのです。さらにこの方は妊娠中であり、自分の血液や栄養をお腹の中の赤ちゃんに沢山送っておりますので、血の弱りが顕著に出てしまいます。血虚(けっきょ:血が弱っている状態)になることで、血をめぐらす少陰心経の場所に、イボが出来たのです。ですからこの漢方薬が効くのです。
予想した通り、イボが取れてキレイになりました、と喜びのお声頂きました。
理にかなった漢方薬の働きに、改めて勉強になりました(-ω-)/
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JUGEMテーマ:健康
ジメジメする季節になってきました。
梅雨の時期は湿気取りのドライペットのように、人の身体も湿気を吸って水が溜まりやすくなり、発散不良になり、体は重く、冷えや炎症、痛みが伴いやすくなります。
この体内の湿気によって病気になったり症状が悪化する人が、実は意外に多いのですが、このことについて病院や患者様自身気付いていないケースが沢山見受けられます。
湿気の病と言っても、検査項目があるわけでもなく目に見えませんし、医者も現代医学では習わないでしょうし、どんな症状が出てくるのか、何をどうやって捉えればいいのか分からないために、病院にかかっても見逃されているのだと思われます。
湿気が原因となり起こる症状として多いものが、めまい、耳鳴り、むくみ、倦怠感、下半身の痛み、腰・関節・神経痛、しびれ、うつ症状、喘息やてんかん、頭痛、鼻水や鼻づまり、咳などがあります。梅雨の時期には症状が特に激しくなる恐れがあります。
湿気は体内で重い性質の水ですから、湿気を取っていく時はゆっくりじっくりと取っていかなければいけません。また『脾胃(ひい:胃を中心とした消化器系)は湿を悪み、湿は関節に流れる』と言われております。脾胃の状態が反映される腕や足、また腰や膝などの関節に症状が出やすいということになります。
実際に湿気を取ることで良くなった例をご紹介致します。
●あるクモ膜下の血管障害の後遺症でリハビリ中の方が、カラッと晴れている日はまだ調子が良いが、どんよりしている日は調子が悪くなるということから湿気を疑い、湿気を取っていく漢方薬で非常に状態が良くなった例があります。
●また雨風の中でお仕事されるような人、例えば電柱に上って作業する人で、年の暮れに寒い中で仕事をしてから、毎夜全身がケイレンするようになった人がいらっしゃいました。この方も体の中の湿気と外からの冷え(風)が原因と捉え、風と湿気を取ることで数日で治りました。
●朝の4時頃になると、涙が出るほどの膝の痛みで目が覚めてしまうという御婦人がいらっしゃいました。数年にわたって苦しんでおられましたが、数日で痛みが治り大変喜ばれた例があります。この方も、湿気が原因でした。(朝方や夕方のだいたい決まった時間に症状が出るという方)
あげればきりがないほどですが、天候に左右されやすい人、台風や気圧の変化で症状が変化する人、海や川、沼や田んぼの近く、または池などを埋め立てた場所、新築マンション(鉄筋コンクリート)に住んでから調子が悪くなった人、外で交通整理のお仕事をされている方、線路の点検・修理をするお仕事、露天商をされている方、その他にも給食室で働かれている人、冷蔵庫に入る仕事、下がコンクリートで水を使う仕事・・・etc(体内の湿気と皮膚に当たる風の影響)、このような方は湿気を帯びやすくなります。
病には、必ず原因があります。原因に対して、お薬も決まります。なぜその症状が出てきたのか、なぜ治らないのか、きちんと捉えていくことが大切です。お困りの方はツルガ薬局までお気軽にご相談下さい。
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先日の朴庵塾(ぼくあんじゅく)セミナーで講義を受けている時、ハッと気付けたことがありましたのでご紹介させて頂きます。
ちょうど厥陰病(けっちんびょう)のところで、今までも何回か厥陰病は勉強していたのですが、その10条を読んだ時にあるお客様の状態のことを言っていることに気づくことができて密かに感動してしまいました。
10条
「傷寒(しょうかん)一二日(いちふつか)より四五日に至りて厥(けっ)する者は必ず発熱し 前に熱する者は後必ず厥し 厥深き者は熱も亦(また)深く 厥微なる者は熱も亦微 厥之(これ)を下すに応ずるに而(しこう)して反(かえ)って汗を発する者は必ず口傷(やぶ)れて爛(ただ)れ赤し」
その前に、厥陰病とは何なのかご存知じゃない方もいらっしゃいますので、簡単にご説明させて頂きます。
本当に簡単に表現させて頂きますと、体が冷えて冷えて、体内の少ない熱が血に逃げ込んでしまい、肝や心包(しんぽう:心臓を包み込んで心の働きを支えているところ)を中心に影響が出てきてしまう病のことを言います。血を貯蔵しているところは肝であり、流すところは心(しん)です。血は熱を持ちますから、肝にも熱がこもり体のちょうど真ん中で横隔膜によって仕切られているところにも熱がこもり、上半身と下半身との気の巡行がうまくできなくなります。心臓などの上は熱く、下は冷える、また内は冷えて外側に熱が浮かんでくるような状態になります。
さて、10条の条文の簡単な訳を書きます。
「傷寒、つまり寒に傷られて、風邪をひいてから1,2日から4,5日になって厥する者、厥(けつ)とは、冷えのことです(厥は、冷える、気が上る、尽きる、などの意味として解釈される文字ですがこの場合は分かりやすく冷えと訳します)。ここでは厥陰病のことを説明していますので、体全体が冷えて陽気が乏しい人のことを言っております。体は冷えてくると、冷えに対抗するように熱を持とうとしますので、その対抗した熱が発熱として現れてきます。冷えと熱は本来はバランスを取り合うものですから、冷えが先に現れてその後熱が出てくるものもあれば、熱が先に出てその後冷えが出てくる場合もあります。冷えの程度が強ければその冷えに見合った熱も強く、冷えが弱い場合は熱も弱くなるはずです。冷えが出てきている場合、小便や大便などで下から抜いていかなければいけない時に、反対に発汗してしまうと口の中が赤く爛(ただ)れたり傷ついて痛みが出てきます。私たちの体は基本的に発汗は上半身の水が、小便大便は下半身の水が出やすいとされています。下から出すべき時に、反対に上から出す発汗をすると、特に厥陰病になるような陽気の乏しい体の冷えた人に無理やりなことをすると、簡単に気や体液のバランスが乱れてしまいます。陰陽の交錯する、外と内との境目である咽(のど)や口にその症状が出てくるのです。」
この条文の特に最後の方の「・・・厥 之を下すに応ずるに・・・」という箇所なのですが、直訳すると冷えて下から抜いていくべきところを・・・、と言う意味です。冷えているのに下す・・・、一見するとおかしいと思われる方々も多いのではないでしょうか。本来、厥陰病のような冷えている人は、温薬で温めていかなければいけません。また、下し、例えば下剤などで便を出させる行為は基本的に熱やエネルギーを抜いていく行為になります。少しでも過ぎてしまうことで、容易に体内バランスが乱れてしまいます。この冷えを下していくべきケース・・・、私も今までは何となくのイメージでしか理解していませんでしたが、今回のあるお客様の状態がこれに当たるのではないかと感じました。
83歳の痩せて色白な男性の症例です。
2018年(火運太過)1月25日に病院へかかり、ペレックス(風邪薬)、カルボシステイン(痰切り)、デキストロメトルファン(咳止め)、セフカペン(抗生剤)が5日分処方されました。
1月26日に奥様がご来店され、25日の時は微熱くらいだったのが、病院のお薬飲んでいたのに逆に今日は38.6℃で高くなってきてしまったので病院へまた行くべきかどうか、待ち時間も長いので逆に症状が悪化してしまうのではないか不安で、ということでした。
ご様子をお聞きすると、しんどさはなく、食欲も今朝はおかゆを食べて、2杯も食べれた、その後食べ過ぎたせいか少し気持ち悪くなったみたいだが、しばらくして落ち着き今は家で寝ている、とのことでした。
この方は以前に肺炎を起こし入院されたことがある方です。痩せていて陽気が少ない方です。なぜ今日熱が高くなってきたのか、そして今の状態と養生法、肺炎への注意をお伝えして、漢方薬(少陰や厥陰の状態に使う処方)を2日分差し上げました。家にあるコンクレバンと保元黄も一緒に服用して体力を高め、ご自宅で様子を見るようにお伝え致しました。
後日、ご来店頂いたときに経過をお聞きすると、翌日は下痢が数回起こり、熱は知らない間に下がっていた、とのことでした。その下痢の様子を聞くと、水みたいな下痢でもなく、ドロッとした感じでもなく、あまりご本人様も分からない感じでしたが、下痢をした後ドカッ―としんどくなるような下痢ではないようでした。
ちなみに葛根湯にも下痢があります。
太陽病(たいようびょう)中篇の2条
「太陽と陽明(ようめい)の合病(ごうびょう)の者は必ず自下痢(じげり)す 葛根湯 之を主る」
風邪で表に邪(じゃ:体を害するもの)があり、胃が弱っていると胃の方に落ち込んできた邪を表に戻せずに下痢してしまうことがあります。ただその本は表にありますから、表を治す葛根湯で良い場合があります。
漢方薬は、その人のその時の状態を考え、体が治りやすいように、邪を出しやすいように手助けするものです。この83歳の男性も汗で熱を出すのではなく、下痢で熱を出す方が、体に無理なく自然に治りやすかったということになります。病の位置や体の力の持ち方によって治り方が違うのです。この人のケースは、太陽と陽明の合病の葛根湯の下痢ではなく、厥陰病の「厥之を下すに応じる」の状態に当てはまります。つまり、この方に出した漢方薬(少陰や厥陰病で陽気を補う処方)により体の中の熱(38.6℃)の原因になっていた冷え(厥)を下痢で押い出すことができたという事です。冷えを下痢で出した、出すべき時の状態をこの方の治験例で知ることが出来ました。非常に勉強になりました(-ω-)/本当に傷寒論(しょうかんろん)・金匱要略(きんきようりゃく)って、すごいですね・・・。
補足ですがもし仮に、この方に実際に出した漢方薬ではなく、葛根湯をお出しして服用して頂いたらどうなっていたか・・・。
大変な状態になっていたと思います。例えば、条文どおりに「而(しこう)して反(かえ)って汗を発する者は必ず口傷(やぶ)れて爛(ただ)れ赤し」になっていたかもしれませんね。
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JUGEMテーマ:健康
冬のある某日。
急に上腕の後ろ側の皮膚がヒリヒリして痛くなりました。
朝は自分でも気付かないくらいだったのですが、夕方から夜にかけて洋服が少しすれるだけでも痛くなってしまいました。
あまりにヒリヒリして痛いので、何か出来ているのではと思い、鏡で見てみても赤くも何ともありません。
左腕だけでしたので、片側でヒリヒリをピリピリとして神経症状のように捉えると、もしかすると帯状疱疹なのかも!?と心配にもなりました。(そこまでの免疫力低下・体力低下にはなっていないので、多分違うだろうとは思っていましたが・・・。)
その日の夜ご飯、22時頃になりましたが、食べ終わる頃に猛烈にお腹が痛くなって軟便(少し下痢)になりました。
何も冷たい物の取り過ぎも、メチャクチャな暴飲暴食も、偏食も間食も無いのに、なぜ急に下痢したのか・・・。
そういえば、この1週間くらい前から、口角炎(口の横が赤くなる)が出来始め、ここ数日前から口内炎らしきものも出来始めていました。
そして冬です。「腎」が力を持ち、バランス的に「心」が押さえ込まれやすい季節です。
この下痢は、そうです、半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)ですね。
案の定、半夏瀉心湯を飲んでから、便の様子も正常に、上腕のヒリヒリ感もほぼ無くなり、口角炎・口内炎も痛みが楽になりました!
これらの症状の原因は、「小腸の熱」でした。
冬は心の働きが抑えられます。心は「小腸」と表裏の関係があります。
つまり冬は、誰でも小腸に無理がかかって、気が不足して熱をおびやすくなっている季節になります。
また冬は、外気が寒いのでこの寒さに負けないように体内に熱を溜め込む、つまり熱がこもりやすくなる季節でもあります。
そのため、小腸を中心として胃や消化器系の熱が口内炎や口角炎の症状を引き起こしてしまったのです。
上腕のちょうどヒリヒリした場所は、「太陽小腸経(たいようしょうちょうけい)」という経絡が通る場所です。小腸の熱が、小腸の状態を映し出す経絡の場所に症状として現れていたのです。
ですので、小腸の熱をとる処方で全てが良くなったのです。
漢方理論の素晴らしさを改めて実感できました。
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JUGEMテーマ:健康
45歳の女性の症例をご紹介させて頂きます。
2018年(火運太過)1月に入ってから胃のむかつきと背中の痛みを感じ、いくつか漢方薬は飲んだけれども治らない、とご来店されました。
経過を聞くと、
年末年始は食欲があり食べると胃の痛みが出てきたので、この時はいつも持っている半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)を服用して治していた。
1月17日から土用に入り、むかつき(むかつきはあるけれども食事は食べれる、空腹時や食後など何か飲食物が胃に入ることによっての症状変化はなし)が強く出てきて、いつも服用する半夏瀉心湯を飲んでも効かない。胃だけでなく、背中まで痛い。
自分で何種類か持っている漢方薬のうち、胃が冷えたのかとも考え人参湯(にんじんとう)も飲んでみたが良くならない。柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)も飲んだが良くならない。本日の午後から病院へ行こうかと思っているとのこと。
<考察>
この方は、よく漢方薬をお作りしている方です。大抵の症状ならご自身で判断されて早めの服用で治りますが、今回は治らないとのことでした。
漢方薬をお出しする上で、一番大切なことはその方の状態を捉える事、根本を捉える事です。根本を捉えるためには、病の原因が分からなければいけません。なぜその症状が出るようになったのか・・・。本人の体のことはその方自身が一番よく知っておりますから、聞き出していかなければいけません。しかし現実的には、本人もなぜなったのか、思い当たることもなく、訴えている症状以外は何も変わりなく、なかなか十分な情報が得られないケースも多々あります。今回もそうでした。
そういう時はどうすればいいのか・・・・。その人の体質と生活や食事、環境、季節、他の人の症状の出方などからも色々と予測することが可能ですから、そういうところからきちんと考えていきます。
今回の場合は、年末年始からの疲れと食べ過ぎからの胃腸への負担があるのは間違いありません。胃が弱れば、胃中は気が滞りやすくなり、冷えや熱も持ちやすくなってきます。その上1月17日から土用に入り、土用は脾胃(ひい:消化器系)が力を持つ季節ですので、より胃は疲れが出やすく、熱を持ちやすくなってきます。ですから土用に入ってから、むかつきと背中の痛みもより一層つらくなっています。そして、背中の痛みの位置もちょうど胃の後ろらへんです。胃兪(いゆ)といって胃の状態が出るところに痛みを感じておりました。それ以外の症状は、冷えや口渇などもなく、小便や大便の出も確認し問題ありませんでした。
上記の3処方は服用しても効かないことは分かっております。1月17日〜2月3日までは土用は土用でも、冬の土用です。冬は腎が旺(おう)する期節で冬の寒さで腎が冷えやすく影響が出やすい時でもあります。腎が冷えれば心(しん)である血が熱を持つようになり血液の流れや、脈、血管に影響が出やすくなります。血に熱のしこりができて、ちょうど胃や肝臓の半表半裏(はんぴょうはんり:半分表でもあり半分裏である位置、つまり中間付近)の位置に気の痞えが出来ていると考え、少陰病(しょういんびょう)に載っている四逆散(しぎゃくさん)を考えました。少陰の病は、心と腎の経絡の影響が一番に出ますし、その血のしこりが土用の時期に胃に入りむかつきと背中の痛みを出していると考えたからです。
店頭ですぐ1包服用してもらい、30分後にもう一度服用して、数時間あけてもう一度、1日分を午前中で服用してご様子を教えて頂くようにお伝え致しました。
お昼頃に再度ご来店。
吐気は少し楽になったが、背中の痛みは変わらないとのことでした。まだ2回しか飲めていないとのことでしたので、店頭でもう一回分服用してもらいました。その服用後に、漢方薬を服用する水分でむかつきを少し感じると言われました。ん?、と思い、再度いくつか問診させて頂きました。そうすると、今日は水分を飲んでいるわりに尿の出が悪いことが分かりました。
「心胸中に停痰宿水ありて自ら水を吐出し 後心胸間虚し 気満ちて食する能わざるを治す 痰気を消しよく食せしむる」
の条文を取り、茯苓飲(ぶくりょういん)を処方しました。
翌日来店。
服用後、むかつきも楽になり、胃の辺りも楽になり、尿の出も良くなり、少し様子を見ようと病院への受診はしませんでした。もう少し服用を続けてみたいとのことで、茯苓飲を購入されました。
その後、日に日に症状が軽減して病院へ受診せずに治せました、もうすっかり良くなりました、とご報告頂けました。
その季節やその人の状態を考えて、根本を捉えていくことの大切さ、改めて勉強になりました(-ω-)/
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2017年10月21日(秋の土用:10月20日〜11月6日、2017年:木運不及の年)
3人目の子供を出産されて5ヶ月目の30代女性。
母乳の出は大変良く、今まで1人目のときも2人目のときも母乳で悩んだことはなかった(双子を産んだくらいよく母乳が出ると言われたほどに母乳は良く出る)。
数日前から母乳は出ることは出るが、残っている感じがするようになり、初めて病院の母乳外来へ受診しマッサージを受けた。
乳腺の管が細くなっている言われた。おはぎや甘い物、もちなどには気をつけて食べないようにはしていたので食べ物が原因ではないように思うとのこと。
問診していくと、
ちょうど子供の風邪をもらったのか今日から喉が痛い
●熱無し
●せき、寒気、鼻水なし
●肩こりはずっと前から慢性的にある
●体のほてりや熱感、熱さはなし
●口の乾きは有り
●舌は苔なく、色も正常
●顔色も白くキレイ
●食欲もあり、ふらつきやめまいなどその他の気になる症状はなし
<考察>
今年は木運不及で肝の力が弱い年です。そしてさらに秋は肝が抑えられる期節です。肝は中焦(ちゅうしょう:簡単に言うと体を三等分にして真ん中に位置するところ)の横隔膜に位置します。半分表であり、半分裏の位置が肝臓です。のども体表部と内臓との境目に位置し、半表半裏と言えます。肝は筋肉を主り、ここに気がこもると肩こりや口の乾きも生じます。乳腺の管の周りは筋肉で支えられ、ここに気がこもるとうまく伸縮運動できずに、管の伸び縮みも出来ず、病院で言われる狭くなっている状態にもなる可能性があります。その結果母乳の出が悪くなったり、残った感じもします。
ということから、半表半裏(はんぴょうはんり)の肝に気のこもりを取る漢方薬を3日分処方させて頂きました。最初の1時間で3包くらい飲むようにお伝え致しました。
<結果>
10月23日来店
「1時間で3回くらい飲んだらすぐに母乳の出が良くなりました。風邪ののど痛も1日で治り、もう何ともないです。」とおっしゃられました。
ほとんど気にはならなくなったが、まだちょっと違和感はあるという事で、同じ漢方薬を3日分お分け致しました。
10月28日来店
もう大丈夫です!治りました!とご報告頂きました。
産後の熱や産後のトラブル、授乳中の症状はあまり病院のお薬を服用することはどうしてもオススメできません。
また服用されてもなかなか改善されない方も多くいらっしゃいます。
そういう時には、きちんと自身の体の状態を捉えて自分自身で治しやすい状態に整えていく安心・安全な漢方薬をご利用くださいませ(/ω\)
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JUGEMテーマ:健康
先日、ある80代女性のお客様と久しぶりに店でお会いした時に、肌の色が以前と比べて大変白くなっていました。そのことをお伝えすると、ご本人さんは「そうぉ・・・!?」と気付いていない様子でしたが、一緒にお越しになられていた兄弟さんも、私の話で「本当だ・・・、白いよ!」と気付いてくれました。
何も特別な事をしていないのに、色白になってくる・・・。
これは何を表していると思いますか?
若い女性の人は「肌が白くなったね!」と言われると嬉しいかもしれませんが、この方の場合はそんな楽観的なことは言ってられません。顔色や皮膚の色が白くなってきているということは、漢方的には「肺が衰えてきている」と捉えます。もちろん貧血の青白さや、一時的な体調などで白くなることもあるでしょうが、この方の場合は年齢的なこと、自分ではコレといって思い当たる原因がないこと、今までのその方の状態、経過などを考えると肺の力が衰えてきていることが分かりました。
どなたでも、病院で長く入院して寝ている時間が長くなると、痩せてきて色白になってきます。これは「久臥(きゅうが)気を傷(やぶ)り、肺を労(ろう)す」と言って、長い間臥して横になっていると、肺の気が弱り衰え、肺や大腸、皮膚や鼻などに弱りの症状や病気を起こしてしまうという意味です。肺気が衰えてくると、肺の状態を反映する皮膚が白くなってくるのです。案の定、最近鼻水も出ることが多くなった、家で一人暮らしで横になる(臥する)ことも多くなった、という症状も出ていました。全て肺の気が弱って出てくる症状でした。
私は、その方に「肺炎」に十分注意するように伝えました。ご高齢の方の肺炎は、死亡率が高いのです。肺気が弱り、皮膚の守りが弱ることで風邪は引きやすくなります。それに加え、これからだんだん寒くなってきて、インフルエンザも流行してきます。とにかく風邪を引かないように十分注意して頂くこと、今は元気でも少しでも風邪気味になると回復することが出来ず長引いて症状が激しくなると肺炎まで引き起こす可能性があること、ガタガタっと急に弱る可能性があることをお伝えしました。
とにかく今から予防的に温め補っていくことが、これから元気でいて頂くためには非常に大切だと一生懸命伝えました。
その方は昔からの大切なお客様です、ずっと元気でいてもらいたい!!
今現れてきている体からのサインをお伝えして、その人が前もって自分の状態を知りこれからの予防・養生をして頂けたら・・・・・、その方の未来が元気で幸せなものでありますように・・・・
私も一人でも多くの方に色々とアドバイスが出来るようにこれからも勉強頑張ります!!
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健康診断や病院の検査で示される検査数値。
最近よく目にされる機会も多くなってきているのではないでしょうか。
店頭でも検査数値についてよくご質問を受けます。
検査数値を見ていくにあたり大切なことがあります。
検査数値はもちろん病気発見や状態把握のための有用な手段の一つにはなりますが、絶対的なものではないということです。また何か1つの数値だけを見て判断するのではなく、いくつかの数値を総合的に見ていく必要があります。継続的に見ていかないと分からないこともあります。そしてもう一つ、検査数値には正常値というものが表示されていますが、病院によって正常値の数字が大きく違うことも少なくありません。厳格に見ていかなければいけない数値もありますが、あまり細かい数値を気にしなくていいものもあります。
さて今回は、腎臓の検査数値で大切な「クレアチニン」と「GFR」について簡単に説明させて頂きます。
先日も書きましたが、腎臓には、血液を糸球体というろ過フィルターに通してきれいにする働きがあります。この血液をきれいにする力、糸球体でろ過された値をGFR(ジーエフアール)という数値で表します。GFRが低いということは、腎臓の働きが悪いということを意味します。GFRの基準値は、60以上と言われています。
このGFRは、?性別、?年齢、?血液中のクレアチニン(筋肉のごみ)の量、の3つから推算されます。?のクレアチニンは、筋肉のゴミですから、クレアチニンが高ければ高いほど腎臓でろ過できていない、つまり腎臓の働きが悪いということになります。クレアチニン(Crとも書きます)の基準値は、男性:0.5〜1.1、女性:0.4〜0.8とされております。
GFRが低くなり、クレアチニンが高くなって、自身の腎機能だけではなかなか血液をキレイにすることが出来なくなると、透析(腎機能を人工的に代替する)が開始されます。この透析の目安を日本透析医学会が発表しております。それによりますとGFRが8未満、クレアチニンは8以上になってから透析を行う方が生命予後が良好で望ましいとされております(細かく言うと他の様々なことで透析導入のラインは変わりますので、絶対的なものではありません)。
さてここからが本題ですが、例えばGFRが10の人が店頭に来られた時に、この数字だけを見て判断することは実はよくありません。上述したようにGFRは筋肉のゴミであるクレアチニンを糸球体でどれくらいきちんとろ過できているかどうかを現した値です。つまりクレアチニンから算出されます。クレアチニンは筋肉のゴミですから、そもそも筋肉が痩せている人はクレアチニンの数値も基準値よりも低く考えなければなりません。80歳のご高齢のご婦人で、痩せて筋肉の量が少ない方のGFR10の場合は、実際のGFRよりも低い、つまり一般的なGFR10の腎機能よりもさらに悪い(低い)と判断しなければなりません。反対に筋肉が多い人でGFR10の場合、一般的なGFR10の腎機能よりも良い(高い)と判断致します。
このように検査数値においても、数値だけを見て判断するのではなく、その人自身の年齢や体格、様々なことを考慮しながら見ていかなければ本当の意味が分からないのです。検査数値を見る時も、漢方薬をお出しする時も、その人自身をきちんと見ていくこと、根本を捉えることが大切なことになるのです。
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今週は、水曜日の薬剤師会の循環器系の勉強会があり、心臓中心の内容でした。
そして木曜日は、検査数値の専門的な講師を招いての自店勉強会で、腎臓の検査数値について勉強致しました。
一見、心臓と腎臓と全く違うように思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、実は関係が深いのです。現にそれぞれの勉強会で心臓の構造と働き、心不全の症状、むくみや腎臓の働き、腎臓に作用する利尿薬など共通する内容がありました。
「腎臓が悪くなると、心臓にもその影響が及び負担がかかってくる」
これは西洋医学でも様々なデータで分かっていることですが、漢方の東洋医学では昔から説明されています。
相生相剋(そうせいそうこく)の関係というのがあります。
肝臓は心臓を助け、心臓は脾臓(ひぞう:東洋医学の五行の脾臓はすい臓と考えます)を助け、脾臓は肺臓を助け、肺臓は腎臓を助け、腎臓は肝臓を助けます。助けがあることで各々が正常に働くことができます。この助け合う関係性を相生(そうせい)と言います。
反対に、力を持ち過ぎているところは抑え合いながらバランスを取っていこうとする関係性もあります。これを相剋(そうこく)と言います。肝臓は脾臓を抑え、脾臓は腎臓を抑え、腎臓は心臓を抑え、心臓は肺臓を抑え、肺臓は肝臓を抑えて健康を保ちます。
例えば、腎臓について見てみましょう。
腎臓の代表的なはたらきとして、血液をきれいにしたり、血圧を調整したり、赤血球の合成、カルシウムの吸収や骨形成、水分や体液、ミネラル、PHの調節などが知られております。
腎臓は血液の汚れをろ過していく場所ですから、腎臓が悪くなると糸球体(しきゅうたい)というろ過フィルターの目が粗くなり、普通なら通さないタンパク質までも通過して尿に漏れ出てきてしまいます。それによって血液中のタンパク質であるアルブミンも減ってきてしまいます。このアルブミンは、血液中の水分調節をしているタンパク質です。また体力の指標・栄養状態を反映し、骨折や寝たきり、ガンや感染症の予防、免疫や自然治癒力・ホルモン力を高め、若々しく健康で長生きの絶対第一条件とされている非常に大切なタンパク質です。このアルブミンが減ることで、水分調節が出来ずに血液中の水分量が増え、血管内や心臓にかかる圧力も高まり負担がかかります。これにより、むくみや頻脈、動悸が出やすくなります(腎臓は心臓を抑える相剋関係です)。
実はこのアルブミンは肝臓でしか作られません。つまりアルブミンが尿で漏れ出てくるほど腎臓が悪くなると、肝臓は減ってきたアルブミンを少しでも増やそうと頑張ります。つまり負担がかかるのです(腎臓は肝臓を助ける相生の関係です)。
また肝臓は血を貯めこむ場所です。元気な血がきちんと肝臓に戻り蓄えられることで肝臓も正常に働くことが出来ます。実は血液中の赤血球を作るためには、腎臓から分泌される「エリスロポエチン」というホルモンが必須になります。腎臓が悪くなりエリスロポエチンが減ると貧血(腎性貧血)となり、肝臓も弱るのです(腎臓は肝臓を助ける相生の関係です)。
このように腎臓と心臓の関係性について、西洋医学では様々な研究や統計で最近分かってきましたが、東洋医学では実は何千年も前から理解されていたことなのです。
東洋医学・漢方薬の理にかなった考え方、改めて感動いたしました(/ω\)
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最近風が涼しくなってきました。気温も秋らしくなり、過ごしやすくなってまいりました。
ただ生活は、まだ夏と同じようにクーラーや冷蔵庫の中の冷えた物を取っている方も多いのではないでしょうか。
昨日は休日急患センターで勤務させて頂きましたが、熱が出るお子様が多かったように感じました。冷たい物が続いていると子供さんは大人よりも体が弱いですから、鼻水や咳、風邪などの体調不良を起こしやすくなります。養生法は、とにかく甘い物(お菓子やパン)、冷えた物や果物は控えて頂きたいという事になります。
クーラーなどで皮膚表面から冷やし、夏から秋にかけての飲食物で体内も冷やし、この時期よく腎まで冷えて体調不良を起こす方が多くいます。腎は、体内で一番深い所に位置しますから、本来はそこまで冷えの影響が出てしまうということは大変なことなのですが、最近は若い人でも多く見られるようになってきました。体を養う食事が減り、栄養不足、血液や体に力が無い人が増えてきたためと思われます。普段の食生活が予防には大切ですね。モデルやアイドルの方々が色々な媒体で身近になり、体型や外見、その時の格好良さやキレイさばかり追い求める方が多くなってきました。5年後や10年後、20年後の自身の身体を左右していく命を養う本当の食事に意識を置く方が減ってきたように思います。注意していかなければいけません。
さて先日来られた50歳の女性。
頭痛、めまいがあり、前日に常備してある苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)を服用して頭痛は治まったが、それ以外の体調不良が出てきて来店。
●めまいあり
●足首の冷えあり
●首筋のこり、肩こりはもともとある(五十肩)
●今朝からのどが痛い
●風邪っぽいが寒気無し
●体はだるく、ぼっーとする
●食欲なし
●昨日の夜は透明の小便が出て、今朝も回数多く色は薄い
●下痢は無し
原因を聞くと、冷たい物を取ったからかもしれません、とのことでした。顔は少し赤くのぼせているような感じもありました。
少陰病(しょういんびょう:体内の水と血のバランスが乱れ、腎や心に影響がでる病)の状態と取り、真武湯(しんぶとう)を3日分処方致しました。
店頭で服用して頂き、10分程で身体が温まってきて、めまいと首コリがやわらいできた、とおっしゃって頂きました。
夕方頃に再来店されたころには、もうすでに6包程服用されており、かなり良くなられておりました。
この時期体を冷やし過ぎないように、お体に気をつけてお過ごしください。
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「漢方薬って本当に効くんですか?」
「漢方薬って長く飲まないと効かないですよね?」
未だに多く聞かれます・・・( ノД`)シクシク…
単刀直入に言いますと、漢方薬はすぐ効きます。傷寒論に「二刻一周」、つまり28分48秒で気血は身体を一周回ると書いてあります。漢方薬を服用すると約30分で身体を一周回り、1回服用分の効果が出ます。2回飲めば2回分の効果が出ます。漢方薬はすぐ効いているのです。
ただ、漢方薬の効き目は、その人の持つ自然治癒力を最大限発揮できるように整える働きですから、無理やりに抑えつけて一時的に強力に止める西洋薬(病院のお薬や薬局の風邪薬、痛み止めなどのお薬)とは違います。一時的でも西洋薬で抑えつければ、すぐに実感は得られますが、治していることとは違いますから、自分で治していく準備が整っていない方はお薬の効果が切れればまた症状は出てきて元に戻ります。
漢方薬は、自分で治していく原理原則に基づき、治しやすいように整えてくれますから、その治り方も「知らない間に楽になっていた!」とか、「気づかないうちに症状無くなっていた!」と言う感じで表現される方がほとんどです。自分自身で治して良くなっていることに気付かない方が多いです。そのくらい自然な効き方なのです。でもすぐ効きます。
その証拠に、私が漢方薬の効き目に本気で感動した症例をご紹介させて頂ければと思います。
【百聞は一見に如かず】ですから写真を掲載させて頂きます。
皮膚のかかとの肉がえぐれて、骨らしきものが見えるほどのひどい状態でした。
細かい経過や漢方薬処方名は省略させて頂きますが、病院へかかり塗り薬や様々な処置をしていても全然治ってくる気配がなく、患者様ご本人が「ツルガ薬局で治していきたい!」と言って頂いたため、漢方薬中心に治療させて頂きました。本来は薬局で治療していくレベルではないと思います。それくらいの状態です。
最初は少しケガをしたくらいの傷だったということですが、だんだんひどくなり肉がえぐれてきました。
病院の手当や色々な塗り薬などしていても一向に良くならず、逆にだんだん大きくなってきていました。
いくつか状態を考えて漢方薬を飲んで頂きましたが、怪我の修復、肉の再生には全く効きませんでした。
色々と処方を変えながら、ある2種類の漢方薬を飲み出してから劇的に変わりました。
たった3日程で、急に患部に浸出液が分泌されてきたのです。
ここから3週間継続服用した結果、
そこから3ヶ月服用後、もう傷は完全に塞がりました。
私はこの時の漢方薬のことが忘れられません。
「病院ではなく、ツルガ薬局で治したい」とお客様から言って頂いたことに対しての喜びと責任。
最初のいくつかの漢方処方は足のかかとの傷には全く効かなかったわけです。
何とかしてあげたい、治って頂きたい・・・。
必死になって出した漢方処方。
数か月にもわたって治らないどころか徐々に傷も大きく肉のえぐれ方も激しくなってきた患部が、
その人の体の状態に漢方薬がバッチリ合った瞬間、ものの3日程で患部に変化が出てきて「治りそう!」とご本人様がうれしそうに店に来ていただけた、あの出来事が私の中では忘れられません。
この例では、恐らく漢方薬がなければ、この方は傷はいつまで経っても治らなかったと思われます。
私が漢方薬の効き目に本気で感動した症例です。
もし、病院の手当やご自身で養生されてもなかなか改善されてこない、そんなときにはツルガ薬局にお気軽にご相談下さいませ♪
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漢方薬は、その目的とする働きがきちんと発揮されるように、生薬構成、量やバランス、煎じ方や作り方、服用の仕方まで緻密に計算され、実際に人が服用しながら作りあげられてきました。
同じ生薬構成であっても、その中の1つの生薬のたった1gの差で、大きく働き方が変わっていくこともあります。
【 甘草瀉心湯(かんぞうしゃしんとう)と半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)のように、甘草瀉心湯は狐惑病(こわくびょう)という精神的な症状によく効くようになってきます 】
たった1つの生薬の違い、量の違いで働きが変わる、これが漢方薬なのです。
ここを理解されていない、気づいていない方がたくさんいらっしゃるのが残念でなりません。
また、各々の生薬の働きは、一緒に合わさる生薬との兼ね合いで働き方、作用の場所や範囲なども変わってきます。
例えば甘草乾姜湯(かんぞうかんきょうとう)という漢方薬があります。名前の通り、甘草と乾姜の2つの生薬が合わさって出来ている漢方薬です。
個々で見ますと、甘草(かんぞう)は味:甘平で、急迫を和らげ逆をめぐらす(正常に戻す)作用があります。
乾姜(かんきょう)は味:辛温で深きを温め、冷えて停滞している水を動かしたり、下痢や嘔、咳、煩躁(はんそう:わずらわしさやさわがしさ)、厥冷(けつれい:手足から冷える)、胸痛、腹痛、腰痛などを治していく働きがあります。
しかし、上述したように漢方薬は合わさることでその独自の働き方をしますので、甘草乾姜湯という処方になると肺を温め、陽気を復し、冷やし過ぎて陽気を損じた場合の誤治(誤った治療)の救急薬などの目的でよく使用します。
この甘草乾姜湯は、一般的には肺を温めていく漢方薬なのですが、ここに人参(甘微寒)と白朮(びゃくじゅつ:苦温)が加わることで、甘草乾姜湯の温める力は肺から胃に重点を移します。この処方名が人参湯です。
今度は甘草乾姜湯に、白朮と茯苓(ぶくりょう:甘平)を加えると、この白朮茯苓は利水剤といって水を動かしますので、体の中で水を調節している場所はどこでしょうか・・・、そうです、腎膀胱系ですね。つまり甘草乾姜湯の温める力を、腎へ重点を移します。この処方名は苓姜朮甘湯(りょうきょうじゅつかんとう)です。腎臓の冷えに使います。トイレが近く、さっき行ったのにたっぷり出る、透明に近い小便の時は、腎が冷えている場合が多いですから、よく効く処方です。
小便もたくさん出て透明で近い、そして後ろからも、つまり下痢も甚だしいとき、こういうときは甘草乾姜湯に附子(ぶし:辛温)を加えて四逆湯(しぎゃくとう)にします。附子は陽気を増し津液(しんえき:血液以外の体液と考えてもらえれば結構です)を保ちますから、前からも後ろからも漏れ出て、津液や陽気などの漏出が止まらない時は良く使います。
このように、生薬バランスや量などによって、作用点や働きそのものも変わる場合も多々あります。
混ぜて飲んだり、その働きを十分に理解せずに違った状態で服用すると、効果がなかなか出てこない場合もあります。
きちんとした理論と、状態を捉えて、その時の自分にあった漢方薬を服用するようにしましょう。
漢方のご相談は、お気軽にツルガ薬局までどうぞ(/ω\)
●猪苓(ちょれい) 甘平 <主薬>
●沢瀉(たくしゃ) 甘寒
●茯苓(ぶくりょう) 甘平
●桂枝(けいし) 辛温
●白朮(びゃくじゅつ) 苦温 <佐薬>
この5つの生薬で構成されている処方です。
猪苓・沢瀉・茯苓は味は甘です。つまり脾胃・肌肉にいきます。白朮は苦味ですから血脈の位置へ作用します。この4生薬は簡単に表現しますと水に作用します。
ここで補足いたしますが、1つ1つの生薬には味と気なる働きがあります。味には酸味、苦味、甘味、鹹味(かんみ:塩味)の5つがあります。各々の味には、補い、助け、益すという「味の三用」なるものがあり、例えば甘味は「肝を益し、心を助け、脾を補う」働きがあります。気の働きには温(温めていく働きがある)、微温、平、微寒、寒(冷やして熱を取る働きがある)があります。
猪苓は渇して小便不利、小便不利による嘔によく効きます。甘平となっておりますので、気の働きとしては温めも冷やしもしない「平」とされておりますが、猪苓の生薬そのものは内に熱ある状態によく効きますので、イメージ的には「微寒」のように考えて使う方が分かりやすいかもしれません。
沢瀉は甘寒で胃の熱を冷まします。つまり沢瀉が入っているという事は、必ず胃に熱があるという事になります。胃に熱があれば喉が渇きますから、沢瀉はこの熱を去り、乾きを潤し渇(かつ)、冒(ぼう:頭に重く大きい帽子がかぶさっているような症状)や眩(げん:めまい)を治していきます。
茯苓は甘平で、沢瀉のように冷やしたりはせずに、脾胃の水をさばくことにより動悸や眩、煩躁(はんそう:もだえてさわがしい)、衝逆(下から上へと突き上げる症状、例えばむかつきや動悸、息切れ肩のはり、頭痛、のぼせなど)、そして肉しん筋?(にくしんきんてき:ピクピク筋肉が動く、ケイレンする)を治していきます。
白朮も同じように水を動かしていく生薬なのですが、味が苦です。苦味のものは血に行きますから、血脈(けつみゃく:血液がめぐる脈、流れる循環器系)の水を利していきます。上述の甘味の3生薬とは作用する位置が違います。そして特徴的なのは、小便不利(ふり)だけでなく小便自利(じり)にも働きます。小便不利は小便の出にくい状態です。小便自利というのは、反対に小便が出過ぎること、または小便の出が悪くなるはずなのに逆に出が良いことを言います。つまり出にくくても、出やすくてもそこの調節をするために使います。例えば小便が少なく、大便に小便で出すべき水が回って下痢している場合や、小便の回数が多くたっぷり出て便が硬い場合など、よく白朮を使います。また血脈を温める働きがありますから、血脈が温まれば筋肉や骨も温まりほぐれますから
筋骨の痛みにもよく使われます。めまい、むくみ、頭痛、吐気、胃腸の病など応用範囲の広い生薬です。
桂枝は気味(きみ)は辛温で、肺や皮膚を温め汗を発し表を整えます。表の陽気が不足することで起こる衝逆(しょうぎゃく:下から上へと突き上げる症状、例えばむかつきや動悸、息切れ肩のはり、頭痛、のぼせなど)によく使います。表のただれを整えたり、表を補う目的で使います。
五苓散で体内の停滞している水を体外に抜く場合、表が整っていないと水はうまく外へ出ません。例えば、2Lの水の入ったペットボトルを真下に傾けても出てくる速度は緩やかですが、逆さにしたペットボトルの上の部分に小さい穴を開けますと、もっと勢いよく早くペットボトル内の水は外に出ますよね。人間の体もこれと同じことが言えます。表である皮膚の状態が整っていないと、陽気が正常にめぐり、気の発散が正常に出来ていないと、体内に停滞した水はなかなかスムーズに外へ出せないのです。この表の陽気を補い整える働きが五苓散内の桂枝にあるのです。ということは、反対に言いますと、皮膚を冷やす(クーラーなど)ことは、五苓散の効き目を低下させてしまうことになります。また白朮で、皮膚の下に流れております血脈を温めて桂枝の表を補う働きを助けております。
このように見ていきますと、1つ1つの漢方薬の生薬構成や量のバランスなど、精巧に緻密に考えられて作られていることが分かってきます。素晴らしいですね♪
次回は、五苓散を条文を使って説明していきたいと思います。
読んで頂きありがとうございます(/ω\)
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JUGEMテーマ:漢方
2017年7月25日
40代女性 胸の悪さ、少しムカムカする感じが治らないので何とかなりませんか、とご相談。
問診していくと、
●夏の土用(7月19日〜8月6日)に入ってから症状が出始め、もう1週間ほど続いている(ガロールを飲んで様子を見ていた)
●食べられないことはないし、吐くまでもいかないが、ムカムカして胸が悪い
●今朝はむかつきがひどく、何も食べられず、朝から頭痛あり(後頭部)
この方は、毎年湿気が溜まりやすい時期になると腰が重くなってきて、右腕が痺れてきて、麻杏薏甘湯(まきょうよっかんとう)を服用するとすぐ症状が取れる方です。今回も湿気が原因かと思い、麻杏薏甘湯は服用するも効かなかったとのことでした。
ご本人様は思い当たることは特にないと言われますが、この時期ですから冷たい物が多く水気のものも多いだろうと思われます。
吐気と頭痛、それが胃の冷えから来ているとなればまずは呉茱萸湯(ごしゅゆとう)です。しかし、頭痛の場所が胃経(こめかみ近辺)ではなく、後頭部の太陽膀胱系です。呉茱萸湯では取り切れない可能性がありましたが、胃や肺を冷やしている感じもありましたので、人間は治していく時には必ず陽気(ようき)が必要になります。体の土台である胃がしっかりして、体を温めて回復に動かしていく陽気が肺を中心に巡ってくることで身体も元気になってきます。漢方薬も良く効いてくるのです。胃が冷えて肺の陽気が弱ければ、効くものも効きません。まずは呉茱萸湯で症状が全て取れなくても、胃と肺を温めて戻してあげるだけでも、その後の処方が活きてきます。まず呉茱萸湯を1日分お出ししました。店頭で1回、30分後に1回服用して頂きました。
お昼頃に再来店。
まだ症状があり治っていないとのこと。
再問診、
●首すじのこりあり
●肩こりあり
●手の痺れなし
●上半身だけカッーと熱い感じはある、下半身の冷えは無い(のぼせはないと言われる)
頭痛の場所からも太陽膀胱系です。膀胱の親の臓は腎です。胃が弱り腎との調和が取れないと、腎気の突き上げが起こります。気衝(きしょう)と言います。この気の突き上げからの頭痛、吐気と考え、苓桂味甘湯(りょうけいみかんとう)を1日分処方。店頭で1包服用して頂き、お帰りになられました。
後日ご様子を確認したところ、店頭で1包服用後、症状が軽減され自然にご飯が食べれました。夜には、朝ほどの胸やけのひどさはなくもう1包服用後、知らない間に気にならなくなっていました、26日にはもう治っていました、とのことでした。
やはり場所は大事ですね(/ω\)
勉強になりました(−ω−)/
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62歳女性の方の症例をご紹介致します。
2017年(木運不及)8月5日(土曜日) ご来店。
糖尿病の血糖コントロールがうまくできず、今ちょうど病院に入院していて、今日と明日と週末ということで一時帰宅できるようになったので店に寄れた。また月曜日から病院に戻り入院しないといけない。検査で造影剤を飲んでから、胸の辺りがムカムカする。もう1週間くらいになり全く治らず。なんとかなりませんか、とご相談。
問診していくと、
●吐気はないがムカムカする
●食欲→流し込めば食べれなくは無い
●便→便秘ぎみ(元々)
●体格は良く、顔色は黒い
●肩こりやみぞおちのつかえ、みぞおちの堅さや痛み→無し
●舌→苔は無く薄赤色、乾いている感じはない
●冷え→なし
●口の渇きあり 水分は結構取っている
●尿→自分自身では変わりなし、きちんと出ているとのこと
●めまい、耳鳴り、頭痛などその他で気になる症状なし
<考察>
造影剤を飲んでから症状が出て1週間ほど治らない、ご本人様は造影剤のせいだとおっしゃっておりますが、1週間ずっと続いているということや、土用中に症状が出始めたこと、この方の体格や体質などを考慮すると、造影剤はきっかけになっただけのように感じました。土用中(7/19〜8/6)は脾胃(ひい)が旺(おう)します。つまり胃が力を持ちます。熱も胃にこもりやすくなります。この方の体質を考慮しながらみていくと、胃に熱が入ったことは間違いありません。胃に熱が入れば胃が乾きますので、胃の状態を反映する口も渇いてきます。ですので口渇があり水分をよく取るとおっしゃられております。胃の熱は血にも影響し、心の熱として舌も渇いてきますが、この方の場合水分を取っていらっしゃるので、その水分で乾きは潤い舌は乾燥はしておりません。
さてこの方の病の根本はどこなのか・・・。漢方処方は状態や原因、その方の根本が捉えられれば自ずと出てきます。
例えば、胃熱があり気がこもって下がらないために便が硬く出ない、気は下がれないから逆に上に上り、イライラや肩こり、のぼせ、頭痛吐気などの証がでる。消化器系その中心は胃ですがここの熱気をスッと下に降ろしてあげる、こういう場合は承気湯(しょうきとう)類などを使います。
同じように胃に熱はあるが、熱よりも気が痞えてしまっている。そして胃よりも腸、もっと細かく言うと小腸に熱の本体がある。小腸の裏は心臓であり、血脈(けつみゃく:血液をめぐらす脈、循環器系)ですから、小腸の熱、血の熱、心の熱として、吐気や不眠、神経不安、胃腸症状や下痢(便秘もありますが)などの証が出てくると瀉心湯(しゃしんとう)類などを使います。
はたまた、胃には熱があるが、その熱が胃のすぐそばの横隔膜付近、つまり肝臓に中心を移してくると柴胡(さいこ)剤などを使います(虚熱の場合は、建中湯類や当帰剤です)。
この方の場合は、承気湯類でも瀉心湯類でも、柴胡剤でも、建中湯類でも、当帰剤の状態でもありません。胃に熱があり水分を飲んで胃熱は飲んだ水により少しは冷まされているものの全ては取り切れずまだ胃熱はある状態です。胃の弱りもあるため、飲んだ水をきっちり捌ききれず胃の周りに水の停滞があるイメージです。それによりムカムカ感が1週間も続いていると考えました。
金匱要略(きんきようりゃく)の痰飲咳嗽病(たんいんがいそうびょう)には水分の取り過ぎの病が載っていますが、その中の処方で五苓散(ごれいさん)が一番合うと思いました。五苓散を2日分処方致しました。
8月9日 退院できましたとご来店
ご様子をお聞きすると、1日分服用しただけで1週間続いていたムカムカが取れました!と言って頂けました。
病・症状の根本をみること、本当に大切なことです♪
今回も勉強になりました、ありがとうございました(/ω\)
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